【上海(中国)12日=上田悠太】陸上の桐生祥秀(21=東洋大)が世界を驚かせる。ダイヤモンドリーグ上海大会男子100メートルは今日13日に行われる。大会前日、会場となる中国・上海体育場で調整した桐生は「雰囲気も楽しい。(今まで)大きな大会で集中しすぎていた。無駄に硬いところがあったのですが、今シーズンは緊張しない。気楽にやってます」と笑顔。リラックスした表情が好調の証しだった。

 あの時とは全然違う。国際陸連が主催する最高峰の大会・ダイヤモンドリーグに初参戦した13年バーミンガム大会(英国)。タイムは10秒55で16人中最下位。初の海外レースだけでなく、海外に行くのも初めてだった。集合場所も分からない。スパイクを履くべき場所にアップシューズで行き、慌てて履き替えた。靴ひもを結んだのはレーン紹介の時だったという。「頭が真っ白になった」。もうそんな姿はない。余裕がある。

 桐生は7レーンに入った。左隣の6レーンには自己記録9秒85でリオ五輪男子400メートルリレー米国代表マイク・ロジャース。世界トップレベルのスピードを間近で体感できる。「隣で走るのは楽しみ」と話す。17年世界選手権(ロンドン)、20年東京五輪へ向けて、桐生は強豪相手でも本来のパフォーマンスを発揮できるかが課題。脱皮するには、まさに絶好のレーンに入った。世界が注目する一発勝負のレース。土江コーチも「力を出せば十分戦える」と言う。その先に9秒台が待っている。