18歳のホープが10秒0台が5人そろう、大会史上まれにみる激戦を制した。サニブラウン・ハキーム(東京陸協)が世界選手権(8月、ロンドン)男子100メートル代表に内定した。追い風0・6メートルの条件下で10秒05の大会タイ記録で初優勝。2日連続で自己記録を更新し、日本人初だけでなく、世界最年少9秒台を視界にとらえた。多田修平(関学大)が10秒16で2着、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)が10秒18で3着に入り、3枠ある代表入り濃厚。桐生祥秀(東洋大)は10秒26で4着だった。

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 「ハキーム君が強い」という、ひと言に尽きる。決勝までの3本で失敗したところがなかった。100メートルを走る上でも序盤、中盤、終盤と分かれず、長身を生かしたストライドでスーッと自然に走ることができる。カール・ルイスやウサイン・ボルトのように60メートルまでしっかり我慢して走れる。それが強みだ。記録はどんどん伸びるだろう。

 多田は、足の回転がきれいでピッチを最後まで押し通せるのが特長だ。世界と戦う場合、後半で抜かれることもあるだろう。だが今は怖いもの知らずのまま、いけるところまで行けばいい。私も経験があるが「旬」を取り損ねると時間がかかってしまうスプリンターは多い。2人には一気に9秒台に入って欲しい。

 桐生は、少し9秒台の期待を1人で背負わせてしまったところがある。春先から9秒台を出したいという気持ちがレースや日程に出てしまったかもしれない。9秒台に価値を置くのか、東京五輪で活躍することに価値を置くのか。今後はその部分も重要になるだろう。私の立場では後者で、その力が十分ある選手だと思う。(男子100メートル日本記録保持者)