陸上のダイヤモンドリーグ第8戦アスレティッシマが6日、スイス・ローザンヌで行われる。リオ五輪金メダリストは8人がエントリーされたが、そのなかでも400メートル世界記録(43秒03)保持者のウェード・ファンニーケルク(24=南アフリカ)に注目が集まる。今季は100メートル、200メートル、300メートルの3種目で自己記録を更新。本職の400メートルでの世界記録更新が期待できる。

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 ファンニーケルクが先月出した記録は、どの種目もレベルが高い。

 100メートルの9秒94(6月20日)は五輪&世界陸上で決勝進出も望めるタイム、200メートルの19秒84(6月10日)は今季世界最高、300メートルの30秒81(6月28日)は世界最高記録である(国際陸連が公認していない種目のため世界記録ではなく世界最高記録と表記される)。

 ファンニーケルクがリオ五輪で更新した400メートルの世界記録は、1999年にマイケル・ジョンソン(米国)が出したタイム。ジョンソンは100メートルのカール・ルイス(米国)と並び、20世紀短距離界のレジェンドである。

 6月のチェコ・オストラヴァの300メートルも、ジョンソンが持っていた30秒85を17年ぶりに破った。

 ファンニーケルクは「ジョンソンの記録を2つも更新できるとは…。偉大なことを達成できて、うれしいとしか言いようがないよ」と感激の面持ちで話した。

 300メートルではウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)も、平地世界最高の30秒97を持っていた。ジョンソンの世界最高は記録が出やすい標高1000メートル以上の高地でマークされたもの。そのジョンソンの記録を平地で破ったのだから評価が高い。

 オストラヴァの大会にはボルトも100メートルに出場していた。海外メディアではボルトが、「彼が陸上界を引き継ぐことになるだろう」と自身の後継者に指名したという報道もある。

 400メートルは今季、国外ではローザンヌが第1戦。ショートスプリントのスピードが上がったことを400メートルに結びつけることができれば、人類初の42秒台が出ても不思議ではない。

 男子400メートル以外では前戦のパリ大会に続いて、3段跳びのクリスチャン・テイラー(27=米国)にも世界記録更新が期待できる。

 また、男子砲丸投げのライアン・クルーザー(24=米国)は22メートル65、女子400メートル障害のダリア・ムハンマド(27=米国)は52秒64と、6月末の全米選手権でともに今季世界最高を出したばかり。

 パリ大会は記録面での盛り上がりに欠けたが、ローザンヌ大会では好記録続出が期待できそうだ。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していたが、今年はファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会が実施され、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ・チャンピオンとなる。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4または6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルのほかダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。