陸上のダイヤモンドリーグ第10戦モハメッド6世国際競技会が16日、モロッコの首都ラバトで行われる。リオ五輪金メダリストでは、女子短距離2冠のエレイン・トンプソン(24=ジャマイカ)が100メートルに出場する。女子3000メートル障害には世界記録保持者のルス・ジェベト(20=バーレーン)もエントリーした。金メダリスト以外では男子100メートルにヨハン・ブレイク(27=ジャマイカ)が、200メートルにはアンドレ・ドグラッセ(22=カナダ)が出場する。8月のロンドン世界陸上でウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)に挑むスプリンター2人に注目しておきたい。

 ブレイクにとってロンドンは、“打倒ボルト”を是が非でもやり遂げたい場所だ。

 12年のジャマイカ選手権はブレイクが、100メートル、200メートルともクラブの先輩でもあるボルトを破って優勝。ロンドン五輪で王者交替を予測する声も多かったが、立ち直ったボルトが北京五輪に続いて2冠を達成した。

 ブレイクは2種目とも銀メダル。100メートルの9秒75、200メートルの19秒44はともに、五輪銀メダル選手の最高記録である。ロンドン五輪のブレイクは“最速の敗者”となってしまった。

 ブレイクは13年に大きな故障をしてしまい、13・15年の世界陸上は代表入りさえできなかった。リオ五輪には出場したが100メートルは4位でメダルに届かず、200メートルは準決勝落ち。

 今シーズンで引退するボルトに勝つチャンスは、ロンドン世界陸上が最後。シーズンベストは9秒90の100メートルが今季世界2位、19秒97の200メートルは今季世界6位。13年以降の自己最高ではあるが、ラバト大会100メートルで9秒8台前半までタイムを上げられれば、ロンドン世界陸上への準備は整ったと見ていい。

 リオ五輪のドグラッセは100メートルがボルト、ジャスティン・ガトリン(35=米国)の2強に続いて銅メダル、200メートルが銀メダルだった。

 200メートルは準決勝で同じ組になったボルトに全力で勝負を挑み、「何をやっているんだ、まだ準決勝だぞ」とレース後にボルトから声をかけられた。ボルトの体力を消耗させれば、回復の早い若手が有利になるというドグラッセ陣営の戦略だったが、決勝のドグラッセは硬さが出てタイムを落としてしまった。

 それでもドグラッセが、“打倒ボルト”の一番手であるのは衆目の一致するところ。追い風参考記録以外では今季はまだ9秒台、19秒台を出していないが、一昨年の北京世界陸上100メートルも、昨年のリオ五輪の2種目も、本番で自己新を出した。大舞台での強さ、狙った試合への調整能力はボルトに匹敵する。

 ボルトはタイトルこそ取り続けているが、12年シーズンを最後に19秒50未満の記録は一度も出ていない。

 ラバト大会でドグラッセが19秒80の自己記録を更新するようなら、ロンドン世界陸上では19秒台前半と金メダルが期待できる。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していたが、今年はファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会が実施され、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ・チャンピオンとなる。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4または6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルのほかダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。