リオ五輪女子短距離2冠のエレイン・トンプソン(25=ジャマイカ)が100メートルに優勝し、昨年4月からの連勝記録を「14」に伸ばした。トンプソンの10秒87、男子200メートルのアンドレ・ドグラッセ(22=カナダ)の20秒03など、5種目で大会新記録が誕生したが今季世界最高は1つも出なかった

 トンプソンが“負けない強さ”を見せた。

 スタートでリードしたが中盤では、右隣のレーンのマリージョゼ・タルー(28=コートジボアール)に並びかけられた。終盤はトンプソンが自身の走りを維持したのに対し、タルーの走りが乱れて差が広がった。

「来月のロンドン世界陸上に向けて、想定した通りの体調になってきています。レース自体も良くなっていますね」

 今季のダイヤモンドリーグも、4試合に出場して全勝。だが2位とのタイム差を見ると、5月の上海大会こそ0・26秒の大差だったが、7月の3試合は0・05秒、0・03秒、0・03秒と小差が続いている。

 良く言えばどんな状況でも負けない強さをトンプソンが発揮しているが、悪くとらえればいつ負けてもおかしくない。

 トンプソンが本人の言葉通りの調整ができているなら、世界陸上は7月のダイヤモンドリーグよりも大きいタイム差となるはずだ。

 ロンドン世界陸上でトンプソンが勝てば、12年のロンドン五輪から続くジャマイカの五輪&世界陸上での連勝が「5」に伸びる。

 男子100メートルと200メートルもジャマイカが「7」と連勝を続けているが、ウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)の力が落ちているためロンドン世界陸上はどうなるかわからない。

 それを上回る五輪&世界陸上の連勝を続けているのが男子3000メートル障害のケニアで、リオ五輪はコンシスラス・キプルト(22)が勝って連勝を「8」とした。

 ところがラバト大会ではキプルトが途中棄権し、リオ五輪4位のソフィアン・エルバッカリ(21=モロッコ)が8分05秒12の自己新で優勝。2位のジェイラス・キプチョゲ・ビレチ(24=ケニア)に5秒79の大差をつけ、終盤はスタンドの地元観衆に何度も手を振る余裕を見せた。

 2年前の北京世界陸上はケニアが1〜3位を独占したが、昨年のリオ五輪は銀メダルが米国のエバン・ジャガー(28)、銅メダルがフランスのマイディン・メキシベナバ(32)だった。

 男子3000メートル障害のケニア包囲網は、確実に狭められている。

◆今季の女子100メートル

 ダイヤモンドリーグでは5試合で行われ、トンプソンはそのうち4試合に出場して全勝。記録も6月のジャマイカ選手権で10秒71の今季世界最高を出し、5月のダイヤモンドリーグ上海大会は向かい風0・3メートルで10秒78で圧勝している。ロンドン世界陸上でも金メダル候補の一番手だ。

 上海大会2位で全米選手権優勝のトーリ・ボウィー(26=米国)、ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会でトンプソンに0・03秒差と迫ったダフネ・シュキッパーズ(25=オランダ)、ラバト大会で同じく0・03秒差のタルー、10秒82の今季世界2位を出しているミシェル・リー・エイヒー(25=トリニダードトバゴ)らが、打倒トンプソンの候補たち。本番で自己記録を更新するような走りができないと、トンプソンには勝てないだろう。