16種目が今季のダイヤモンドリーグ最終戦として行われ(9月1日のブリュッセル大会で残り16種目が実施される)、優勝者が今年のダイヤモンドリーグ・チャンピオンに決定した。そのうち15種目に世界陸上ロンドンの金メダリストが出場し、女子800メートルのカスター・セメンヤ(26=南アフリカ)ら7人が今大会でも優勝したが、半分以上の8種目で金メダリストが敗れる波乱の大会となった。また、女子3000メートル障害優勝のルス・ジェベト(20=バーレーン)が8分55秒29、女子棒高跳び優勝のエカテリーニ・ステファニディ(27=ギリシャ)と2位のサンディ・モリス(25=米国)が4メートル87と、3人が今季世界最高をマークした。

 男子5000メートルは世界陸上ロンドン1万メートル金メダリストのモー・ファラー(34=英国)が、5000メートル金メダリストのムクター・エドリス(23=エチオピア)との大激戦を制し、13分06秒09で世界陸上の雪辱を果たした。

 超スローペースになった世界陸上とは異なり、ペースメーカーが先導して3000メートルまではハイペースで進んだ。しかし、そこからスローな展開となって集団は大人数のままラスト1周に。

 違ったのはファラーの位置取りだった。4000メートルで2番手に上がると、4350メートルでトップに立った。世界陸上のように周りを囲まれず、いつでもスパートできる位置を確保したのだ。ファラーの表情をアップにした映像を見ると、はっきりと顔を回して左右を確認することもあれば、目だけを動かして相手の表情を盗み見していることも。トラック長距離種目で五輪&世界陸上の金メダル10個と勝ち続けてきた男は、ライバルたちの状態を読み取ることでスパートのタイミングを的確に判断してきた。

 残り200メートルからはファラーとエドリスがデッドヒートを展開。ホームストレートに出たところでファラーが差を広げたが、フィニッシュ前でエドリスが追い上げた。最後はダイビングヘッドを敢行したエドリスと、頭の上でMの字を作るモボットポーズができなかったファラーが、ほぼ同時にゴールに突っ込んだ。

 少しの間をおいて勝利を知らされたファラーは両手を腰の横で広げて「勝ったのか」という表情。そしていつものようにひざまずくと2度、トラックにキスをした。カメラマンの要望に応えてモボットポーズも披露。

 「このレースはとにかく勝ちたかった。すべてのアスリートが、勝って去って行くことを夢見ていると思う。ハードだったけど、それができて本当にうれしいよ」

 来季からはマラソンを中心に、ロードレースに専念する。

 「スタジアムで走ることを長年楽しませてもらったから、トラックや観衆、ファンの人たちの前から去ることはさびしい」

 トラック長距離種目史上最も勝負強かったランナーが、その持ち味を存分に発揮して別れを告げた。

◆今季の男子5000メートル

 出場試合数は多くないものの、エドリスがダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会と世界陸上に優勝。ローザンヌ大会で出した12分55秒23は今季世界最高記録でもある。

 一方のファラーはダイヤモンドリーグ・ユージーン大会に優勝。世界陸上はエドリスに敗れたが、ダイヤモンドリーグ・チャンピオンを決めるチューリッヒ大会でエドリスに雪辱。2人の優劣はつけ難い。

 2人以外では若手の長身選手、ヨーミフ・ケジェルチャ(20=エチオピア)がユージーン大会でファラーに次いで2位、世界陸上4位、チューリッヒ大会3位と、2強に次ぐ成績を残した。来季以降の注目選手といえるだろう。