嵐の予感! 日本代表からの引退を表明している川内優輝(30=埼玉県庁)が20年東京五輪のマラソン代表2枠を決めるグランドチャンピオンシップ(GC)の出場権を獲得した。33キロすぎから独走し、2時間10分3秒で3年ぶり3度目の優勝。ワイルドカードでのGC出場条件だった2時間11分7秒以内を1分以上も上回った。東京五輪に出る意思はないが、この日は未定としたGCに出場すればガチンコ勝負を予告した。

 表彰式で、苦笑いしながらGC出場権の記念の盾を受け取った。福岡国際を2時間10分53秒で走った川内は、ワイルドカードでのGC出場条件である国際陸連が記録を公認する競技会の上位2大会の平均記録2時間11分以内を満たした。暑さが苦手のため、東京五輪は参加しない意向を示している。GC出場は未定ながら「権利がなければ、出る、出ないが選べない。権利さえ持っておけば、悩める。あった方がいい」と力強く言った。

 出場を決断した場合はどうするのか。川内は、五輪代表選考をさておき「もちろん出る時は万全の状態で出ますよ」と真っ向勝負を宣言した。今夏の世界選手権で日本勢最高9位に入った男だ。GC2位以内なら、五輪代表も現実味を帯びてくる。その際は代表復帰か代表辞退か-。いずれにしても波乱を呼びそうだ。日本陸連の坂口男子マラソン五輪強化コーチは「川内はすごい。(GCは)出て欲しい。でも(東京五輪代表権を)取ったらどうするの」と複雑な様子だった。

 レースは33キロ付近の上りと下りの坂で仕掛け、元青学大のエース一色、2位だった浜崎を置き去りにした。2週間前に福岡国際、先週もハーフマラソンに出場した中、鉄人ぶりを発揮。前半では時折、ペースメーカーの足を軽く蹴って、ペースアップを促すなど力の差を誇示、マラソン77戦目でゲストランナーだったレースも含め通算30勝目を挙げた。そしてGC出場よりも胸を張ったのが、75回目となるフルマラソン2時間20分切り。本人によると、米国人が持つ“世界最多”に並んだという。来年1月1日には米国でマラソンに出場予定で「これで超えられます」と笑顔。100回に到達したら、ギネス記録として申請する意向だ。

 最強の公務員ランナーと呼ばれ、12年ロンドン五輪代表が絶望的になった時には丸刈りにするなど、陸上界に話題を提供してきた。この日も代表引退したはずが、手袋には「JAPAN」の文字。優勝インタビューが終わると「まだまだこれからですよ」と不敵に笑った。波乱の予感が漂う。【上田悠太】

 ◆20年東京五輪マラソン代表選考方法 19年9月以降に開催されるGCで男女各2人を選ぶ。17年夏から19年春までに行われる国内指定大会「GCシリーズ」で、日本陸連が各大会に定めた順位とタイムの条件を満たした選手はGC出場権を獲得。ワイルドカードでの出場権もある。GC優勝で五輪代表が内定し、2位と3位のうち、17年夏から19年春までに派遣設定記録(男子2時間5分30秒、女子2時間21分)を突破している上位選手が代表入りし、いない場合は2位が代表入りする。残り1枠は男女各3大会の中から19年5月に発表の派遣設定記録を突破し、記録最上位の選手を選ぶ。現時点でGC出場権は男子が村沢、大迫、上門、竹ノ内、川内。女子は前田。