2020年東京オリンピック(五輪)のマラソンが、早朝5時台のスタートとなる可能性が出てきた。これまでは午前7時とされていたが、今夏の猛暑を受けて見直しの必要性が浮上。自民党が21日、検討していたサマータイム導入を断念したことで、開始時間の前倒しが現実的になった。大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(75)は同日、午前5時30分、同6時スタートなどの案があることを明かし、早急に対策を講じることを口にした。

武藤総長は厳しい表情で言った。「サマータイムが2020年に間に合わないのであれば、競技時間の前倒しを含めた対策が必要になる」。この日、自民党がサマータイム導入を検討する研究会を開き、猛暑対策の「切り札」だった同制度の導入断念を正式表明。男女のマラソンはスタート時間の前倒しが避けられない状況になった。

「マラソンと競歩は早めたつもりだった」と武藤総長。当初、マラソンの開始時間は午前7時30分だったが、今年7月には30分早めたスタート時間を国際オリンピック委員会(IOC)と合意。50キロ競歩はスタート時間が全競技で最も早い午前6時に変更され、トライアスロンやゴルフも開始が前倒しされた。

ところが、予想を超える今夏の猛暑で、マラソン開始時間の見直しが叫ばれた。10月末には日本医師会などが組織委に要望書を提出。選手の熱中症などのリスクから、スタートを1時間半前倒しすべきだとした。これを受けて、組織委も再検討を進めていた。

組織委副会長も務める遠藤利明元五輪相は研究会後に「スタートを早くできないかと、正式にIOCとIF(国際競技連盟)に提案したい」と話した。武藤総長も「IOCと見直しを議論しないと。IF、東京都とも調整が必要になる」と言った。開始時間変更は運営にも影響する。早朝になればボランティアなどの交通手段の確保も重要だ。

26日から各国オリンピック委員会連合(ANOC)の会議があり、30日からはIOC理事会、総会が予定される。武藤総長は「そこでも当然、話題になるだろう」と話す。12月3日からのIOC調整委員会との事務折衝までには方向性を出す意向で「(来春の)チケット販売開始が期限。時間はない」とした。本番への最大の懸念事項とされる暑さ対策。大会の華マラソンは女子が8月2日、男子は最終日の9日に行われる。