5度目のマラソンとなった「3代目山の神」神野大地(25=セルソース)が2時間11分5秒の8位に入り、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場権を手にした。

過去の成績から2時間11分42秒以内なら進出が決まる中、35キロから40キロを全選手中2位の15分57秒で追い上げてゴールに飛び込んだ。

「MGCを取らないといけないプレッシャーもあった。考えれば考えるほどいけるのか、と。でも、今日は楽しもうと思って走れた。結果が出て良かった」と安堵(あんど)した。

ハイペースで進んだ15キロ過ぎで先頭集団から離脱した。「正直、少しきつくなった」と力不足を感じながらも、「今まではきつい時に無理して最後までダラダラ走るしかなかった」と頭は冷静に働かせ、諦めずに東京の名所を駆けた。20キロ過ぎからは単独走で、前をいくランナーを1人1人かわしていった。過去4度のマラソン全てで起きた腹痛も起きない。対策はしていなかった。「前は対策していて、起きたらショックで沈んだ。今回は起きたら起きたで」と覚悟を決めていた。すると不思議と異変はなかった。「たまたまかもしれない。でも、今日起きなかった事実は残った。そこは今後のマラソン人生において大きなレースになった」と糧も得た。

昨春にプロランナーに転向し、実業団時代には実現できなかったケニア合宿も敢行してきた。今レースに向けても通算2度目となる合宿を同地で積み、「タフな環境でやってきたので、雨のマラソンでも粘り切れた。ケニアでの練習があったからこそ」と手応え十分。今後は同じく2000メートルを超える高地となるエチオピアに4月にも赴く。「標高2700メートルを超える所で走ってきます。夏にはまたケニアにも行きたい」と計画を明かした。

MGCまで残り半年。「15キロで遅れたのは完全な力不足。受け入れつつやる必要がある」としながら、その表情に曇りはない。少しずつかみ合いつつある蓄積の歯車。「山の神」に、雨中の都市でマラソン人生の晴れ間が見えてきた。

◆東京マラソン 都市型市民マラソンとして07年に設立。17年に25キロ過ぎから高低差が少なく、潮風の影響も軽減されるコースに変更した。18年には設楽悠太が2時間6分11秒の日本記録(当時)を樹立した。賞金総額は男女各2025万円で、優勝賞金は各1100万円。世界記録なら3000万円、日本記録なら500万円が贈られる。日本男子3位までで2時間11分0秒以内、または同4~6位で2時間10分0秒以内などの条件でMGCの出場権を得られる。

◆東京マラソンでのMGC出場権獲得条件 日本男子3位までで2時間11分0秒以内、または同4~6位で2時間10分0秒以内でMGC出場権が得られる。また順位を満たさなくても、男子は2時間8分30秒以内、女子は2時間24分0秒以内を記録すれば、ワイルドカードで出場権獲得。