IAAF(国際陸上競技連盟)ワールドチャレンジ第3戦「セイコー・ゴールデングランプリ大阪」(日刊スポーツ新聞社共催)が19日、ヤンマースタジアム長居で開催される。ニッカンスポーツ・コムでは世界から集結するトップアスリートに挑む日本の5選手を紹介。第5回は男子走り高跳びの戸辺直人(27=JAL)。2月にドイツ・カールスルーエであった競技会で2メートル35をクリアし、従来の日本記録を2センチ更新した。金メダルを目標とする今秋の世界選手権(ドーハ)へ弾みをつけるジャンプを目指す。

194センチの長身に顔の大きさは24・5センチ。手足も長いスラッとした8頭身ジャンパーは今、トラック&フィールドの個人種目でオリンピック(五輪)、世界選手権のメダルに最も近い位置にいる日本人ともいわれる。世界室内ツアーを日本人で初優勝し、最新の国際陸連のランキングは5位。2メートル35の記録は室内とはいえ今季世界最高だ。戸辺は「記録としては今後、2メートル40を狙っていきたい」と意気込む。男子走り高跳びで日本勢の五輪最高順位は5位、世界選手権はメダルはおろか入賞もない。だが「世界選手権では金メダルを取れるように頑張りたい」と力強く話す。

13年ぶり日本記録更新の契機となったのは、まず助走の歩数を6歩に固定したこと。以前は7、8、9歩など複数の歩数で練習していたが、どの会場でも可能な6歩だけに絞った。同じ動きを繰り返すことで、踏み切りの技術は安定した。また踏み切りの瞬間、両腕を一緒に振り上げていたが、昨年9月から世界の主流とは異なる、片腕を上げて踏み切るフォームに変更。腕の動きにつられ、体が浮き上がる悪癖が修正された。1つの技術の土台を積み上げ続け、飛躍を遂げた。

もともと物事を突き詰めて考えるのは好きなタイプ。今春に卒業した筑波大大学院では修士課程2年、博士課程で3年間を過ごし、競技を力学的に見るなど研究を続けた。「走り高跳びのコーチング学的研究」という博士論文はA4の158枚になる。技と知が凝縮されたジャンプで世界へと羽ばたく。(おわり)【上田悠太】

◆戸辺直人(とべ・なおと)1992年(平4)3月31日、千葉・野田市生まれ。野田二中で全国中学大会を制す。専大松戸高でも高校総体を優勝し、新潟国体では2メートル23の高校新記録を樹立。世界ジュニア選手権で銅メダル。15年世界選手権は2メートル26で予選落ち。16年リオ五輪、17年世界選手権は出場ならず。194センチ、72キロ。