11~12度という低温が選手たちを苦しめ、短距離・跳躍種目は全体的に記録が低調だった。

その一方で男子1万メートルのロネックス・キプルト(19=ケニア)が26分50秒16、女子5000メートルのアグネス・ジェベト・ティロプ(23=ケニア)が14分50秒82、男女の長距離種目で今季世界最高が誕生した。

日本から唯一出場した男子棒高跳びの山本聖途(27=トヨタ自動車)は、5メートル48で3位に食い込む健闘を見せた。

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寒さの恩恵を受けたのは北欧の選手たちだった。男子では走り幅跳び、砲丸投げ、円盤投げの3種目、女子でも棒高跳びで地元スウェーデン勢が優勝し、男子400メートル障害は隣国ノルウェーの選手が優勝した。

中でも一番の番狂わせは男子走り幅跳びで、ノーマークに近い存在だったトビアス・モントラー(23=スウェーデン)が8メートル22の自己新記録で優勝した。17年世界陸上金メダルのルヴォ・マニョンガ(28=南アフリカ)、16年リオ五輪金メダルのジェフ・ヘンダーソン(30=米国)、参加選手中一番の8メートル68を持つファン・ミゲル・エチェバリア(20=キューバ)ら、世界のトップジャンパーたちを破ったのである。

「これだけのビッグネームの中で勝てたなんて、自分でもビックリしている。ルヴォやエチェバリアがもっと跳んでくると思ったけど、たぶん僕だけがこの寒さに慣れていたのだと思う」

今季のモントラーは実力もつけていた。3月のヨーロッパ室内選手権は銀メダル。今大会1週間前には、追い風2・4メートルで公認記録にはならなかったが(追い風2・0メートルまでが公認)8メートル43を跳んでいた。

「あの記録が僕に自信を与えてくれた。今日は家族や友人が来てくれていたし、地元の観衆が僕にとって特別な雰囲気を作ってくれた」

自身の実力アップと、寒さも含めた“地の利”がジャイアントキリングを実現させた。

 

棒高跳びの山本も寒さを味方にした。競技開始時点では小雨も残っていた悪条件だったが、最初の高さの5メートル36を3回目にクリアすると、次の5メートル48は1回で成功した。

17年世界陸上金メダリストのサム・ケンドリクス(26=米国)が5メートル72で優勝したが、2位のピョートル・リセク(26=ポーランド)、3位の山本と、上位3選手は自己記録から約30センチのマイナスにとどめた。

リオ五輪金メダルのティアゴ・ブラス(26=ブラジル)は記録なし、5メートル90台の自己記録を持つ選手たちが5メートル48を失敗した。

山本は自身のツイッターに「気温が12度に加え小雨の中しぶとく入賞! 同じような大会をフィンランドで経験していたからこの結果に。なんでも経験は大事。」とつぶやいた。

山本は5月3日のドーハ大会に続き、ダイヤモンドリーグで2試合連続3位。累計得点は12点で、2連勝で16点のケンドリクスに次いで2位につけている。どんな条件でも結果を出す勝負強さが備わってきた。

◆今季の男子走り幅跳び

ダイヤモンドリーグは上海大会(5月18日)とストックホルム大会の2試合で男子走り幅跳びが実施され、上海大会のタジェイ・ゲイル(22=ジャマイカ)の優勝記録は8メートル24、ストックホルムのモントラーは上述のように8メートル22である。ヘンダーソンが4月に跳んだ8メートル38が今季世界最高で、この種目の記録的なレベルは現時点では低い。

日本の橋岡優輝(20=日大)が4月のアジア選手権優勝時にマークした8メートル22は、モントラーらと並んで今季世界4位である。

ゲイル、モントラー、橋岡の3人は五輪&世界陸上に出場したことはない選手たち。エチェバリアも含めた若手たちが今季の主役になるのか、ヘンダーソンやマニョンガらのメダリストが若手の台頭に待ったをかけるのか。