女子100メートルの昨年総体覇者で、高校歴代2位タイの11秒54の自己記録を持つ御家瀬緑(恵庭北3年)が、11秒68で2連覇を果たした。目標に掲げる日本高校記録(11秒43=土井杏南)更新は持ち越しとなったが、向かい風0・6メートルの条件下でも安定した実力を見せた。今年の織田記念でマークした11秒54は、今季の日本女子2位のタイム。次戦の日本選手権(27日開幕、福岡)で、世代NO・1の女子高生スプリンターが日本の頂点を目指す。

期待や重圧をはねとばすかのように御家瀬が風を切った。スタートから勢いよく飛び出して大きくリード。左隣で走りだした昨年総体8位の立命館慶祥・石堂が迫るも追いつかない。0・6メートルの向かい風にも負けない。跳ねるようなバネのある走りで加速すると、そのままトップでゴールラインを切った。タイムは11秒68。「6台を目指していたので良かった」。優勝した喜びよりも、設定した目標を達成したことに納得したようだった。

今季初戦の4月織田記念でいきなり従来の自己記録を0秒09縮める11秒54を出すと、総体札幌地区予選では11秒57をマーク。「1つ1つのレースを落ち着いて走ることができるようになった」。条件さえ整えば高校新も狙えるが、無理はしない。この日は100メートル、400メートルリレーで計5本走るタフな日程。体力配分を考え「力の出し方もなれてきた」。冷静なレース運びはもう1段階上のレベルで争う上で重要な要素だ。

クレバーな思考力が走りを磨く。自己記録を出した織田記念の時から今大会はスターティングブロックにかける右足の位置を微修正した。「スタートから行かないと4台は狙えない」。改善点を探るのは練習中も一緒。チューブやミニハードルを使う練習でも自分で考えてアレンジする。指導する北海道ハイテクACの中村宏之監督(74)は「上にいくためには自分で考えられる利口さが必要で御家瀬はそれができる。これから日本女子の中心になっていく」と期待をかける。

総体2連覇を狙う前に、次戦は昨年4位に入った日本選手権。今季の自己記録は日本女子2位と、表彰台どころか90年の三木まどか(姫路商)以来29年ぶりの高校生優勝も夢じゃない。御家瀬は「タイムは自己ベストを狙っていきたい。順位は意識しないけど、去年よりは上げたい」。自分の走りを追求した先に、日本の頂点も近づいているはずだ。【浅水友輝】

◆御家瀬緑(みかせ・みどり)2001年(平13)6月2日、札幌市生まれ。札幌太平南小2年で競技を始め、6年の全国小学走り幅跳び優勝。札幌太平中3年のジュニア五輪6位。恵庭北進学後に急成長し、1年時の国体少年女子B優勝、U18日本選手権優勝。全国総体を制した2年時は日本選手権4位でアジア大会400メートルリレー日本代表。3年時の織田記念では日本勢トップの2位。100メートルの自己記録は11秒54。家族は両親と兄、姉。161センチ、51キロ。