最後は歩いて決勝へ。陸上男子のサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が200メートル予選3組で、20秒84の1着だった。史上3人目、2度目となる短距離2冠が懸かる決勝へ駒を進めた。

雨が強く、向かい風も1・8メートルという悪条件もあり、タイムは不発。しかし、100メートル9秒97の日本記録を持つ男は体力の温存に成功。30日午後5時45分からの決勝で大爆発する準備が完了した。末続慎吾(38=イーグルラン)が持つ200メートル日本記録20秒03の更新に期待が高まる。

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最後は止まるかのようにスピードを緩やかに落とした。サニブラウンは腕も振らず、歩くように、フィニッシュラインを通過した。必死で食いしばる他の選手たちを背に。格が違う。貫禄を見せつけ、決勝に進んだ。取材エリアに到着すると開口一番、「お疲れっす」。まるで部活動に励む生徒のように元気よく報道陣にあいさつ。序盤のカーブはスムーズに加速したが、向かい風1・8メートルの悪条件だった。「向かい風きつかったですね。顔を上げてから『きっつ』と思った。でも(序盤)しっかり腕を振れたのはよかった」と笑顔で振り返った。

レース前から余裕があふれていた。男子200メートル予選の直前から小雨は強くなった。過去2度出場した日本選手権では天気が崩れているというジンクスを持つ雨男は、明るいノリで「すみません」と周囲の選手に“謝罪”したそう。おちゃめな一面を見せるも、トラックに立てば、話は別。王者の貫禄が漂っていた。

体力を温存できた点は、大きい。従来、日本選手権は3日間の開催だったが、4日間に延びた。「気持ち的にはハード」と集中力を持続させる難しさもあるとした上で「体は余裕がある」と歓迎する。衝撃的なタイムを出した全米大学選手権は400メートルリレー、100メートル、200メートルを1時間弱の間隔で、3種目の超過密日程だった。その最終種目200メートル決勝後、タイムは20秒08となる日本歴代2位だったが、「ガス欠でした」と言った。しかし今、ガスは“満タン”だ。

そうなれば、大爆発の期待も高まる。100メートルに続き、史上3人目となる2度目の短距離2冠が懸かる決勝。日本記録20秒03を更新する意欲を問われると「う~ん」と思慮を巡らせ「ちゃんとやることをやれば、出るのかな」。男子200メートル決勝は日本選手権の大トリ。クライマックスはド派手に締める。【上田悠太】