アフリカ、アメリカと転戦したダイヤモンドリーグの舞台が、ローザンヌ大会からヨーロッパに戻る。昨年のダイヤモンドリーグ・チャンピオンが9人、今季世界最高記録保持者が5人出場する。

男子5000メートルでは、先月のローマ大会で激戦を展開したテラフヌ・ハイレ・ベケレ(20=エチオピア)とセレモン・バレガ(19=エチオピア)が再度激突。男子走り幅跳びと女子3段跳びでも2強対決が白熱しそうだ。

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ダイヤモンドリーグ・ローマ大会男子5000メートルは、最後の周回でベケレとバレガのエチオピア同士がデッドヒートを展開した。

ラスト1周手前から先頭に立ったベケレがペースを上げて逃げ切りにかかったが、残り200メートルでバレガがスパート。約1メートル前に出たがベケレもそれ以上は離されない。フィニッシュ直前で追い込んだベケレが胸を突き出して逆転した。優勝したベケレが12分52秒98の今季世界最高で、バレガは0・06秒差の2位だった。

ベケレは「セレモンは能力が高く本当に強い選手。最後の最後まで勝つ自信はありませんでした」と、後輩ランナーとの戦いを振り返った。

国際大会の実績ではバレガが上回る。16年U20世界陸上で優勝し、17年のロンドン世界陸上では5位に入賞した。昨年はダイヤモンドリーグ・チャンピオンの座に就き、自己記録の12分43秒02は世界歴代4位である。

一方のベケレは昨年のU20世界陸上で5位と、U20世代でも勝てなかった。ローマで出した12分52秒98は今季世界最高だが世界歴代では32位にすぎない。バレガの方が明らかに“格上”の選手なのだ。

だがベケレの潜在能力を高く評価する声もある。ベケレ自身も「今年は世界陸上で勝ちたい」と意気込む。「ローマの勝利は、私の大きな成功への道のりの小さな始まりにすぎません」

まずはバレガとの、ローザンヌでの再戦が注目される。

男子5000メートルの他にも2強対決となりそうな種目が多い。

男子走り幅跳びにはルヴォ・マニョンガ(27=南アフリカ)とファン・ミゲル・エチェバリア(20=キューバ)が出場。6月のラバト大会ではエチェバリアが、17年世界陸上金メダリストのマニョンガを破った。直接対決で今季2連敗しているマニョンガは、そろそろ巻き返しをはかってくるだろう。

女子3段跳びはカテリン・イバルゲン(35=コロンビア)とユリマール・ロハス(23=ベネズエラ)の金メダリスト対決になる。イバルゲンは13年世界陸上から16年リオ五輪まで五輪&世界陸上に3連勝したが、それを17年世界陸上で止めたのがロハスだった。

昨年はロハスが屋外シーズンの試合に出場しなかった。約2年ぶりの新旧女王対決は9月開幕の世界陸上、来年の東京五輪へとつながるドラマの再スタートだ。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、2016年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。2017年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ(年間)優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計の上位選手がファイナル大会に進出(種目によって異なり7人または8人、または12人)。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、今年9月開幕の世界陸上への出場権が与えられる。ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国ごとの出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。