あくまで照準は200メートルの表彰台に置く。陸上の男子100メートルで日本歴代2位タイとなる9秒98を出した小池祐貴(24=住友電工)が23日、欧州遠征から帰国した。

100メートルも「気持ちは入っている」とした上で、自身については「200メートル選手」と強調。「メダル、トップを狙うために、100メートルは最低限ファイナルに残るための実力が必要。目標をそことした時に、今年は100メートルを、しっかり(力を)出し切るトレーニングとして取り組んでいる」。そう淡々と口にした。

日本勢3人目となる9秒台を出した決勝の約1時間前の予選も10秒09を出していた。翌日は男子400メートルリレーで第2走者を務め、本職の200メートルは疲労も蓄積する中で迎えた。それでもタイムは20秒24。20年東京五輪の参加標準記録を突破した。しかもカーブのきつい2レーンだった。小池は「世界と渡り合えるビジョンは現実的に見える。外レーンで走ったら、世界と戦える。予選で2着、準決勝で2着で外レーンを取れば、決勝を狙える」。しっかりとした青写真が見えていた。

世界を見据え、そもそも「9秒」に目標を置いていないから、その数字は意識せず、口にもしないように心掛けていた。「本当に世界と戦いたいならば、このようなメンタルでいないとダメ」。そこが順調な成長の要因とも分析する。レース後、リオ五輪銅メダルのアンドレ・デグラッセ(カナダ)から「お前よかったな」と声をかけられた。翌日に200メートル、400リレーがあることを伝えると「マジかよ。ウソだろ」と驚かれたという。海外転戦で結果を残し続け、トップ選手からも認知されつつある。

24日で東京五輪開幕まで1年となる。そのことについて問われると「あと2カ月で世界選手権がある。世界選手権でどんな結果が出るかで、どのような挑戦をするのかが決まる。目の前のことに集中することが大事」。足元を見つめ続けているから、今の急成長がある。