1964年東京オリンピック(五輪)男子マラソンの銀メダリスト、ベイジル・ヒートリーさん(英国)が3日、休暇で一時滞在していた英国内の親族宅で死去した。85歳だった。妻ジルさんが明らかにした。死因は心不全とみられる。

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今でも思い出す。80歳過ぎながら、自らハンドルを握り、自家用車を相当なスピードで走らせるヒートリーさんの姿が目に焼き付いて離れない。ご自宅の最寄り駅から助手席に乗りながら「大丈夫かな」と、多少不安だったのが初めての出会いだった。

20年東京五輪の企画で故円谷幸吉さんを取り上げることになり、英国に住むヒートリーさんを急きょ、探すことになった。何とか連絡先を見つけ、取材をしたのが14年6月だ。ご自宅にはきれいな庭があり、ご夫妻で多くの草花を育てていた。そこで、うれしそうに64年東京五輪のことを話すヒートリーさんの姿は、ついこの前のようだ。それ以来、毎年必ず夫妻の名前でクリスマスカードが届いた。

14年10月、64年の東京五輪から50年の節目に来日。その機会に旧国立競技場の解体現場、20年東京五輪マラソンコースの検分をお願いした。そして、何度も食事をともにした。自慢の口ひげに、優しい笑顔。それがもう見られないと思うと残念でたまらない。【吉松忠弘】