陸上男子短距離のサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が、出場が内定していた世界選手権(27日開幕、ドーハ)の200メートルを回避することになった。7日、リレーの代表候補合宿が公開され、日本陸連の土江寛裕オリンピック(五輪)強化コーチ(45)が明らかにした。体の負担を考慮するとともに、100メートル後は、400メートルリレーに集中するための選択だという。金メダルを目指すリレー侍。その切り札がアンカー、サニブラウンとなりそうだ。

最速侍が余力を残し、リレーに挑む。アメリカで活動を続け、今回の合宿に参加していないサニブラウンが、個人種目は100メートルに専念する。7月からフロリダ大陣営と連絡を続けていた土江コーチが「サニブラウン選手は(個人種目を)100メートルに絞る」と明らかにした。理由は20歳と発展途上にある体への負担に加え、400メートルリレーに力を注ぐため。日本歴代2位となる20秒08の自己記録を持つ200メートルでは2大会連続の決勝進出の期待もあったが、より確実にリレー侍として戦う道を選択した。

過去2度の世界選手権、7月のダイヤモンドリーグなど400メートルリレーは故障が重なり、代表での実戦経験がない。バトンの連係が不安要素として付きまとっている。100メートル準決勝、決勝がある28日から400メートルリレー予選までは中5日。その期間、200メートルをパスし、そのままリレーの準備にあてられるのは大きい。世界選手権独特の緊張感の中、個人2種目は体への負担が大きい。前回大会同様リレー欠場を強いられる懸念も、これで少なくなった。デビューが実現すれば、日本記録100メートル9秒97の力は、37秒60の日本記録更新とともに、金メダルへの切り札となる。

故障者が出ない限り小池、白石、桐生とバトンをつなぎ最後はサニブラウンという布陣。白石を除き、9秒台3人がそろう。日本はランキングでの五輪出場をほぼ確実にしている。土江コーチは「来年(東京五輪で)金メダルを狙う以上、アグレッシブに。結果的に失敗でもよしとする」。3週間後、切り札融合の結果はいかに-。吉でも凶でも、1年後の貴重な糧とする。【上田悠太】