【ドーハ=上田悠太】万感の完全復活劇だった。男子50キロ競歩の鈴木雄介(31=富士通)が金メダルを獲得した。

高温多湿の過酷な環境の中、スタートから先頭を歩き続け、タイムは4時間4分20秒。20年東京オリンピック(五輪)の代表に内定した。日本勢の世界選手権金メダルは11年大邱大会の男子ハンマー投げ室伏広治以来、史上5人目。競歩では五輪を含めても初めての快挙だった。20キロの世界記録保持者は約3年に及ぶ故障に苦しみ、一時は引退も頭をよぎったが、再び輝いた。    ◇   ◇   ◇

鈴木は約2年前からスカイプを使い、週3回、約1時間ほど個人講師の英会話のレッスンをしている。まだペラペラとは言えないが、この日のレース後の会見でも英語で対応をしていた。勉強するのには理由がある。「選手の間は海外遠征で英語をしゃべらなくても、何とかなりますが、コーチになった時に海外遠征で選手を引率する時、英語を話せないと選手に安心をして試合に臨んでもらえない。自分のためというより、引退した後のためにやっているという感じです」。故障中、空いている時間を有効活用するためでもあったが、引退後に指導者となった時に必要と考えている。

この日のレース後は、こう言った。「東京五輪へ向け、自分の経験を他の選手にも共有をして、自分が東京でダメになっても、3人のうち1人が東京でメダルを取れればいい」。競歩界の発展に身をささげる覚悟で、今を生きている。