1920年(大9)第1回大会から出場している明大のエース阿部弘輝(4年=学法石川)は、甘いマスクのスイーツ王子として古豪復活を導く。「自分はパンケーキが一番好きなんです。似合わないようなオシャレな店にも行っちゃいます。カロリーは気にしません。そのぶん走れば良い。クリスマスケーキを食べる頃から調子を上げていきたい」。2年時はまさかの予選落ち。前回も自身の3区3位の好走で一時は1ケタに順位を上げたが、復路で失速の17位。まずは5年ぶりのシード権獲得(10位以内)を最低目標に掲げ、1947年(昭22)以来の優勝に少しでも近づける。

7月のユニバーシアード大会(イタリア)1万メートルで銀メダルを獲得はしたが、その頃から右股関節痛などに悩まされ続けてきた。陸上人生で初の長期離脱。夏合宿も回避するほど深刻だった。10月に入って軽めの練習を開始したばかり。夏以降はチームのサポート役に回り、外部との連絡は絶った。唯一頼ったのは明大OBで故障を抱えながら箱根も走った鎧坂哲也(29)。個人的にも食事に誘ってもらい助言を受けた。「心の強さ、覚悟を持つ気持ちを学びました」。精神面はさらに強くなれた。

本来なら小学校時代からの幼なじみで2区濃厚な東洋大・相沢晃(4年=学法石川)と同区間初対決をしたかった。だが、「1区を走りたい。早く箱根を終えたい気持ちもある」。チームの流れを作る役割を自覚するとともに、主将として背負ってきた重圧も大きかった。「アイツと今、勝負しても歯が立たない。個人の結果はどうでも良い。卒業したら、いくらでも対戦することになるので」。箱根を終えた後、一緒にスイーツ巡りの約束だけはしている。(おわり)【鎌田直秀】

◆阿部弘輝(あべ・ひろき)1997年(平9)11月19日生まれ、福島・須賀川市出身。円谷ランナーズスポーツ少年団で競技を本格開始し、仁井田中から学法石川。1万メートルの自己ベストは全エントリー選手で日本選手最速の27分56秒45。箱根駅伝後にしたいことは温泉旅行。173センチ、55キロ。