ワールドアスレチックス(世界陸連)が1月31日(日本時間2月1日)、スポーツ用品大手ナイキの「厚底シューズ」の使用を条件付きで認めた。

厚底シューズを履く男子マラソン前日本記録保持者・設楽悠太(28=ホンダ)は1日、香川・丸亀市内で丸亀国際ハーフマラソンの前日会見に出席。新ルールを受けての発言が注目される中、「気にしてません」。3月1日の東京マラソン、8月9日の東京オリンピック(五輪)(札幌)でも使用可能となったが、自身の走りで競技の主役が誰かを知らしめる構えだ。

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設楽悠は、表情を変えずに短く言った。物議を醸した厚底シューズについてひと区切りついたが「提供されたものを履くだけ。気にしてません」ときっぱり。2日午前10時35分号砲の丸亀国際ハーフマラソンに向けて「今、持っている力をぶつける。欲を言えば、(自身が持つ)日本記録(1時間0分17秒)を目指して頑張りたい」と意気込みを口にした。

厚底シューズは、男女マラソンの世界記録更新など好タイムが続出した。厚底の中に反発力があるスプーン状のカーボンファイバープレートが特徴だ。日本記録2時間5分50秒を持つ大迫、3月の東京マラソンでその更新=五輪代表3枠目を狙う設楽悠、井上大仁らが使用しているが、その推進力が物議を醸してきた。

世界陸連は専門家による検討を重ねた上で、1月31日に新ルールを発表した。

<1>靴底の厚さは4センチ以下。

<2>靴底に埋め込むプレートは1枚まで。

<3>違反が疑われる場合、審判は検査のために靴の提出を選手に要求できる。

<4>4月30日以降の大会で使う場合、4カ月前から市販されているものに限る。

この決定でナイキが実用化を進めていた“超厚底”の新モデルは規制される見通し。新モデルはキプチョゲ(ケニア)が昨年10月、非公式ながらフルマラソンで1時間59分40秒を出したが、五輪で使用できない。

ただし、靴底の厚さやプレートの枚数などは科学的なデータに基づいたものとはいえない。ゴルフのドライバーや短距離のトラックで用いられる反発係数などの数字がない。カーボンでないプレートであれば、いいのか。強い反発力を持つクッションであれば、いいのか。本来はカーボンのプレートだけでなく、足裏と地面の間にあるすべての物質の反発係数をトータルして議論されるべきともいえる。ある関係者は「新ルール発表が拙速である感は否めない」とした。

ひとまず現在の厚底シューズは東京五輪OKとなった。設楽悠は「海外勢に対抗できる走りがしたい」と好タイムを誓った。【益田一弘】

○…名古屋ウィメンズ(3月8日)で五輪代表3枠目を狙う一山は、初めてナイキの厚底シューズでレースに出る。これまで他のメーカーだったが「足裏の疲労感が違う。私に合っていると思う」と好感触。マラソンでは2時間21分30秒を目標に練習を積んでいる。一山を指導する永山監督も「ペナルティーがなければ、あるものを有効活用することは当たり前」とした。

▽川内優輝 選手が不利益を被ることがなくてよかった。ただ市販品ではない、カスタムオーダーや試作品はどうなるのか。もっとルールが明確にならないと。

▽日本陸連の河野匡長距離マラソンディレクター 代表選考が始まっている。同じ条件でやるのは当然のこと。安心した。禁止になっていたら世界陸連への意見書も考えていたところだ。