一般参加の小椋裕介(26=ヤクルト)が、日本新の1時間0分0秒で2位に入った。青学大箱根駅伝初Vメンバーは実業団に入り、昨年から筋力強化。昨年11月から使うナイキの厚底シューズとの相乗効果で、自己記録を2分3秒、従来の日本記録(設楽悠)を17秒も更新。大学時代の下地に独自の工夫を加えた26歳がオリンピック(五輪)代表3枠目がかかる東京マラソン(3月1日)で大番狂わせを起こすかもしれない。

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小椋は、沿道の叫び声を聞いた。「日本記録、出るぞ!」。必死で食らいついた先頭集団に少し離された残り3キロ。「え、そんなわけないだろ」とちらりとタイム表示を見て仰天した。「これは出る!」。残り500メートル、スパートをかけて藤本をかわした。ゴール手前で早めのガッツポーズ。走り抜ければ、日本人初の59分台もあったが「裸眼で両目とも視力0・01以下。度入りのサングラスを外すと見えない。ガッツポーズが早かった。慣れてないので。でも日本記録が出ただけで十分」と笑った。

青学大では4年連続で7区を走り、2度の優勝に貢献。だがヤクルトで芽が出ない。昨年4月に先輩の高久とドイツのハンブルクマラソンに出場。低体温症にかかり2時間40分もかかった。

「このままトラックもマラソンも戦えない。『脱青学』を考えた」。大学時代から継続するインナーマッスル中心の筋力強化を変更。15種類のメニューで、お尻、太ももの大きな筋肉を鍛えて体重を2キロアップ。昨年11月に使い始めた厚底シューズとマッチした。

1時間1分台を狙ったレースで日本新。「こんなタイムが出るとはびっくり。厚底はもろ刃の剣だけど、僕はウエートトレーニングとはまった」。大学での経験に自分の考えをプラス。本田監督は「本人は『アオガクの小椋ではなく、ヤクルトの小椋と言われたい』と話していた。まだ発展途上ですよ」と期待した。

次は3月1日、五輪代表3枠目がかかる東京マラソンに挑む。マラソンの自己記録は2時間12分10秒だが「2時間8分台を目指して、5分台が出てしまったとか。本番で力が出せることを信じてやりたい」。昨年6月に青学大の後輩と結婚。3月末に挙式を控える。「新婚旅行代金を稼がないと」。ハーフマラソンで飛び出した26歳が、大金星を挙げるかもしれない。【益田一弘】

◆小椋裕介(おぐら・ゆうすけ)1993年(平5)4月16日、北海道生まれ。札幌山の手高-青学大-ヤクルト。箱根駅伝で4年連続7区を走る。3、4年時に連続区間賞で連覇に貢献。大学4年の15年ユニバーシアード光州大会でハーフマラソンで金メダル。同期は神野大地。好きな言葉は「逆境」。イチオシの自社製品は「ミルミルS」。家族は妻。173センチ、61キロ。