20歳の有望株が、また進化を示した。

陸上の兵庫選手権は12日、神戸ユニバー記念競技場で行われ、女子800メートルで田中希実(20=豊田自動織機TC)が2分4秒66の兵庫新記録をマークした。今月8日にはホクレン・ディスタンス・チャレンジ・深川大会の3000メートルで8分41秒35を記録し、福士加代子(ワコール)が持っていた日本記録を18年ぶりに更新。この日の800メートルでは、岸川朱里(当時ノーリツ)が保持していた2分4秒92の兵庫記録を12年ぶりに上回った。

後続を大きく引き離し、ゴールした田中が冷静な口調で喜びをかみしめた。

「ずっと『800(メートル)から5000(メートル)まで走れるマルチランナーでありたい』と思っていたので、やっと800(メートル)でも戦えるようなタイムを出せたのは、すごくうれしいです」

前日11日の大会初日は大雨警報で中止となり、1500メートルへの出場がかなわなかった。同日、加古川市内で同じ距離を走り、予定通りに近い刺激を入れた。3000メートルの日本記録樹立から中3日。大きかった反響から生まれたのは、周囲への感謝だったという。

「『すごいね』っていうラインとかはみんなくれたけれど、私の性格を分かっているので『おめでとう』っていう言葉にプラスして『これからも頑張ってね』っていう内容が多くて、すごくありがたかったです。私自身も手放しで『おめでとう』って言われても『う~ん』ってなってしまう、あまのじゃくな性格なので…。今回のこと(日本記録更新)があって、より人間関係において『支えられているな』って感じました」

生まれ故郷の兵庫・小野市周辺を拠点とし、父健智さん(49)から指導を受ける同志社大3年生。次戦は15日、ホクレン・ディスタンス・チャレンジ網走大会で5000メートルに出場する。目標は15分0秒01の自己記録更新。その先には福士が05年にマークした、14分53秒22の日本記録が見えてくる。

「自己ベスト(更新)って言ったら、14分台に乗ってくると思います。今回の網走もですが、5000(メートル)を走る機会があれば、どんどんそういうところ(日本記録)を狙っていきたいと思います」

底知れぬ可能性を持った田中は3日後、再び北海道でスタートラインに立つ。【松本航】