陸上の全日本実業団対抗選手権最終日が20日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われ、女子5000メートルでは、新谷仁美(32=積水化学)が日本歴代2位となる14分55秒83秒で日本勢最高の2位に入った。3位の広中璃梨佳(19=日本郵政グループ)も日本歴代3位の14分59秒37。これまで「15分の壁」を突破した日本人女子は日本記録(05年)を持つ福士加代子(38=ワコール)だけ。一気に2人が大台を突き抜けた。

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新谷が自覚する「弱いメンタル」に打ち勝った。残り1周は必死の形相で腕を振った。ゴールすると、これまで福士加代子だけだった「15分の壁」を、ともに突破した3位の広中と握手し、抱擁を交わした。新谷は「広中さんが前半を1周72秒ペースで引っ張ってくれた。彼女がいなかったら、14分台はなかった」と13歳年下のライバルに感謝した。

14年1月に電撃引退。一時は体重が13キロも増えたというOL生活を経て、18月6月にプロとして復帰した。「分かりやすく結果で表現するのであれば、メダルしかない。例え不可能と言われていても、それを可能にするために私たちはいる」と言い切る。本職は13年世界選手権で5位に入った1万メートル。すでに東京オリンピック(五輪)に向け、5000メートルと1万メートルの参加標準記録を突破済み。五輪の長距離トラック種目でメダルを獲得した日本人はいない。常識も記録も塗り替え、その1点を目指す。

○…東京五輪参加標準記録を突破している5000メートルで、広中が存在感を示した。序盤から果敢にレースを引っ張り、中盤以降は新谷に懸命に食らいついた。日本歴代3位の好タイムで3位。「新谷さんの大きな背中についていけたことは収穫」。2日前には3000メートルで自己ベストを更新。キャップ(帽子)がトレードマークの19歳は、まさに伸び盛りだ。