スーパー1年生が輝きを放った。順大の三浦龍司(18)が1時間1分41秒の日本人選手トップとなる5位に入り、チームを1位通過で10年連続62回目の箱根路へ導いた。

初挑戦のハーフマラソンで、マラソン日本記録保持者の大迫傑(29=ナイキ)が早大1年時(10年)に出したU20(20歳未満)日本記録を6秒更新した。2位以下は中大、城西大、神奈川大、国士舘大、日体大、山梨学院大、法大、拓大、専大までが予選を通過した。本戦は前回優勝の青学大などシード10校、オープン参加の関東学生連合を加えた21チームで、来年1月2、3日に行われる。

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未来の陸上界の希望が、そこにあった。初のハーフマラソン。怖さも、期待される重圧も関係ない。冷たい雨の中を、三浦は淡々と進んだ。前半から日本人の先頭集団には同じ1年生の吉居(中大)がいた。その差を中盤から、じわじわ詰める。18キロ過ぎで並び、競り合いが続く。勝負の後半も表情、足取りは変わらない。残り1キロを切り、ライバルを置き去りにすると、勢いは加速した。「いい結果で終えられて、今後のハーフマラソンにも自信を持てる」。周囲の衝撃をよそに、口調は穏やかだった。

予選会で1年生が日本人トップとなるのは、箱根本戦の「花の2区」で1年時に10人抜き、2年時に17人のごぼう抜きを達成した09年村沢明伸(東海大)以来。タイムはU20のハーフマラソン日本最高記録。従来の記録は大迫の1時間1分47秒だった。自衛隊立川駐屯地のフラットなコースとはいえ、並び、超えた、その名前の大きさが、強さを浮き彫りにする。三浦は「全然、実感はないけど、そういう記録が残ったのはうれしい」と振り返った。

いち早く世界に羽ばたく強い意志がある。京都・洛南高に入学した当初は24年パリ・オリンピック(五輪)を目指すつもりだった。ただ力を付けていくにつれ、洛南の奥村隆太郎監督から繰り返された。「消極的にならず、東京五輪に出る気持ちでやりなさい。学生のうちに五輪代表、日本代表を目指しなさい」。学生ではなく、日本のトップを見据える。強い選手に共通する意識が自然と培われた。7月には男子3000メートル障害で日本歴代2位の8分19秒37をマーク。対象期間外ながら、東京五輪の参加標準記録(8分22秒00)を上回り、来夏の五輪も現実的な目標となった。

体のバネ、地面を蹴る強さが魅力。正月の箱根路は「今のところ、6区が希望区間だが、1区、2区を目指していいのかな」。未知の距離で快走し、志も変わった。起用法について、順大の長門俊介監督は「起伏にも対応できる。一番のキーポイントで使いたい」とし、エースが集う2区抜てきは「状況次第」とした。2月生まれの18歳、その将来性は計り知れない。【上田悠太】

◆三浦龍司(みうら・りゅうじ)2002年(平14)2月11日、島根県浜田市生まれ。浜田東中から短距離の桐生祥秀も在籍した強豪校、京都・洛南高へ進学。3年時は高校総体近畿大会決勝男子3000メートル障害で、30年ぶりの高校記録更新となる8分39秒49。今年1月の全国高校駅伝は1区21位。今春、順大に入学し、9月の日本学生対校選手権男子3000メートル障害は、2位に20秒以上の大差をつける8分28秒51で優勝。5000メートル自己ベストは13分51秒97。165センチ、52キロ。

◆箱根駅伝予選会 各校14人までのエントリー選手のうち、10~12人が出場する。全員がハーフマラソン(21・0975キロ)を走り、チーム上位10人の所要合計タイムの少ない上位10校が本戦出場権を獲得。

例年は東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地をスタートして市街地を走り、国営昭和記念公園へとゴールしてきたが、コロナ禍の今回は駐屯地内を周回する形で実施。当初は非公認コースと発表されたが、その後、公認コースの申請を行い、世界陸連の承認を得た。感染症対策のため無観客で実施。スタート時には「密」を避けるため、前後左右の間隔を確保した状態での異例の号砲となった。

本戦には前回優勝の青学大などシード10校、予選会を突破した10校、予選会の記録上位者を中心に編成する関東学生連合(オープン参加)の計21チームが出場する。なお本戦について、関東学生陸上連盟は沿道での応援自粛を求めている。