全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)は22日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間(42・195キロ)で行われる。昨年優勝の日本郵政グループが、今年も本命に挙げられている。東京五輪マラソン代表の鈴木亜由子(29)は故障明けで調整が遅れているが、前回1区区間賞の広中璃梨佳(20)が5000メートル五輪代表候補に成長した。昨年の世界陸上を故障欠場した鍋島莉奈(26)も復調。広中と同期の大西ひかり(20)と菅田雅香(19)もレベルアップし、チーム力は一段と上がっている。

広中がチームをけん引する存在に成長した。9月の全日本実業団陸上5000メートルで新谷仁美(32=積水化学)には先着を許したが、14分59秒37の日本歴代3位と快走した。

「途中から新谷さんが引っ張ってくれました。強い選手の力を借りて出せた14分台ですが、駅伝につながる自信になりました」。

昨年のクイーンズ駅伝1区では21分32秒で区間賞。一山麻緒(23=ワコール)が持っていた区間記録を18秒も更新した。特に5キロ以降の終盤2キロを、5分59秒と1キロ3分平均を切ったことには驚かされた。

今年は1区の距離が7キロから7・6キロに延びた。トラックでは5000メートルをメイン種目とする広中だが高橋昌彦監督は、前回20秒だった2位との差をさらに大きくできると見ている。

中学3年以降、全国大会はもちろん、すべての駅伝で区間賞を取ってきた広中。積水化学が新谷の走る3区で独走に持ち込む構えだが、日本郵政は広中のリードの大きさ次第で、3区終了時の差を小さくできる。

広中と同期入社の菅田と大西も、トラック種目で自己新を出すなど今季成長を見せている。昨年のクイーンズ駅伝は菅田が2区(3・9キロ。今年は3・3キロ)で区間2位、大西が5区(10・0キロ)で区間4位と、予想以上の走りでトップの流れをキープした。

鈴木、鍋島、広中が日本郵政の3本柱と言われるが、起伏に強くスタミナ型の大西は、鈴木の状態次第では今年も5区に起用される可能性がある。スピードのある菅田は、距離の短い2区や4区(3・6キロ)を区間上位で走るだろう。

入社2年目トリオがチームの屋台骨に成長したが、何度も代表入りしてきた鈴木と鍋島がチームの看板であることに変わりはない。

鍋島は昨夏の故障で世界陸上とクイーンズ駅伝を故障で欠場したが、今年7月に復帰すると9月の全日本実業団陸上1万メートルで優勝。松田瑞生(25=ダイハツ)と前田穂南(24=天満屋)、一山麻緒(23=ワコール)と、上位候補チームのエースたちを抑えている。

鈴木が故障明けでもあり、鍋島が3区出場の可能性が高い。新谷に追いつかれるのが終盤なら、区間賞は譲っても4区への中継で先着したい。

「昨年は『鍋島いなくても優勝できたじゃん』と言われましたが、今年は『鍋島いなかった方が行けたんじゃない』と言われないよう走ります!」。

鍋島は冗談口調の中に決意を込めた。

鈴木は1月から故障し、練習が継続でき始めたのは7月から。クイーンズ駅伝では昨年まで1~3区を走ってきたが、初めて後半区間の5区か6区(6・795キロ)への出場が予想されている。「自分で言うのもなんですが、私に頼る必要がないチームになっています。でも、若い子たちに全てを任せるのでなく、私もチームの一員としてしっかり支えたい」と、鈴木は控えめな言い方の中に決意を込めた。

だがチーム関係者の話を聞くと、鈴木の回復は思ったより進んでいる。3区に起用されたら状態が上がっている証拠だ。その場合は新谷との対決になるが、前半からハイペースで突っ走る新谷に追いつかれても、後半型の鈴木が逆襲に転じる可能性は十分ある。

鈴木が3区なら鍋島が区間賞を2度取っている5区に回り、日本郵政は万全の布陣になる。