東京五輪マラソン代表の鈴木亜由子(29)の快走で勢いづいた日本郵政グループが2年連続3度目の優勝を飾った。5区で起用された鈴木は2位でタスキを受け取り、55秒あった差を逆転。リードを29秒差に広げて最終走者につなげた。けがやコロナ禍で苦しい日々を強いられてきたが、東京五輪へ向けて再び力強さを取り戻した。五輪4大会出場の福士加代子(38=ワコール)にとっては、今回が最後の駅伝出場となった。

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先頭の積水化学から1分近い差の2位でタスキを受けると、鈴木は思い切りよく駆けだした。いつも序盤は慎重に入るタイプだが、「高橋監督からは前半が遅いと口酸っぱく言われていた。その汚名返上。怖さはあったが、チームのためにという気持ちで走った」。

いつにない積極果敢な姿勢で、10キロの区間を快調に疾走。7・5キロ付近でトップを捉え、突き放した。32分18秒の好タイムで区間賞を獲得し、「とにかくトップでタスキを渡したいと必死だった。優勝するには自分が追い付くことが絶対条件と思い、頑張った」。連覇達成の立役者となり、表情に充実感が漂った。

2度目のマラソン挑戦となった昨秋のマラソン・グランドチャンピオンシップで2位に入り、五輪の切符をつかんだ。世界の高速化に対応すべく、「超える」をテーマにハードワークした。しかし、それはリスクと隣り合わせ。今年1月に右太もも裏の肉離れを発症。5月には別の箇所に違和感が生じるなど、スローダウンを余儀なくされた。

本来なら東京五輪が行われていたはずの8月、「本番が今日なら、ベストな状態で臨めたか疑問符」と正直な気持ちを口にした。その疑問を確かな事とするように、約1年ぶりの実戦だった10月の記録会では5000メートルで自己ベストから50秒近くも遅れていた。ただ、焦らず、状態を上げてきた。この日の走りは「ベストな状態」の姿に近づいてた。「この1年、試行錯誤してきたけれど、心身ともにタフさがついてきたかな」と言う。テーマを「超える」と掲げ、紆余(うよ)曲折を経た。ただ、この日、壁を一つ乗り越えた。