びわ湖毎日に続き、福岡国際マラソンも終了することになった。2つのレースに共通するのは、出場資格記録が高く設定されたエリート部門だけの大会であること。幾多の名勝負と伝統を重ねた大会ながら、継続できなくなった背景には、エリートマラソンが抱える苦しい運営事情がある。

エリートマラソンは、どんな選手が出場するのかで、大きく注目度が変わってくる。有力選手を呼ばなくては、注目度は下がり、スポンサー集めに苦労する。記録の高速化が進み、目玉選手の招聘(しょうへい)が生命線となるが、大会が分散する中、その出場料もネックになっていた。

マラソン関係者によると、1人あたり、名の知れた海外の超一流ランナーを呼ぶ場合、「1000万円以上がかかる」ことも。また好タイムを持っている有力選手を呼ぶならば、「500万前後」がいる。総額「1億円」以上かかる場合もある出場料に加え、選手によっては、順位によるボーナスが組み込まれた契約もある。またレースの安全に対する意識の高まりから、警備費も過去に比べて、大きく膨らんでいる。それらをスポンサー支援に依存する形で、賄うのはかなり厳しかった。そんな流れの中で、マラソン界の発展や強化に寄与してきた伝統大会でも、運営の厳しさは増していった。

対して、東京や名古屋ウィメンズのような大型市民マラソンの場合は、大勢の市民ランナーからの参加料も運営費に上積みできる。またランニングブームにも後押しされ、市民マラソンを兼ねる大会の方がスポンサーも集まりやすいという。財政的にも安定した運営がしやすいことからも、トップ選手と、市民ランナーが走る「都市型マラソン」が世界的にも主流となっている。

福岡国際も市民マラソン化が議論されたが、コースの幅が狭い箇所もあり、大型化は、断念せざるをえなかった。市民参加型マラソンである福岡マラソンに統合される案は、タイムが出にくいコースであることからエリートの拡充はできないと判断された。日本陸連の尾県専務理事は「より良いコースでの合併を提案したが、いろんな事情からかなわなかった」と述べた。【上田悠太】