日本陸上界初の5大会連続五輪を目指す福士加代子(39=ワコール)は、女子1万メートルでの東京五輪出場が消滅した。34分台で最下位の19位。感極まりながらゴールすると、場内に一礼し「なんか感動しちゃいましたね。レースは全然勝負にならなかったけど、見守られて、完走できて良かったかな」とほほえんだ。

孤独な走りは約9100メートルに及んだ。1周通過は6番手。2周目で後ろから4人目まで後退し、900メートル付近で最後尾となった。5000メートル付近では同門の安藤、優勝した広中ら先頭集団から周回遅れ。さらには最終盤に2周遅れを喫した。21年前、二十世紀最後の年となった00年春に青森・五所川原工高からワコールへ入社。今も5000メートル日本記録保持者の39歳は「全部初めてですよね。とりあえず一通り全部経験した。1等賞もやって2番、3番…。大きな大会でこんなドベドベもなかったし、最後に拍手もらったのもない。すごいですね」と笑った。

体は痛み、大会前の調整は「何にもしていません」とおどけた。それでも「気持ち的には1等賞とか『勝負しよう』というのは変わらなかった。いっちょまえにね」。そこに、勝負師の意地があった。【松本航】