女子で東京五輪マラソン代表の一山麻緒(23=ワコール)がハーフマラソン自己新記録で優勝し、五輪に弾みをつけた。同コースで行われたテスト大会で、日本歴代6位の1時間8分28秒を記録。勝負どころの直線で後続を引き離し、コースの特徴もつかんだ。五輪代表は鈴木亜由子(日本郵政グループ)が1時間8分53秒の3位、前田穂南(天満屋)が1時間10分50秒の5位。男子では服部勇馬(トヨタ自動車)が、1時間2分59秒で24位となった。

   ◇   ◇   ◇

道ばたに高くそびえた木々が、札幌らしさを醸し出した。一直線に約1・2キロ伸びた北海道大構内のメインストリート。一山は20キロに差し掛かる勝負どころで、歯を食いしばりながら前に出た。五輪補欠の松田瑞生を振り切ると、従来の自己ベストを21秒上回った。

「最後は順位にこだわってゴールに向かって走りました。ホッとしています」

「わりとフラットでかくかくしたコース」と表現した本番会場で、耐える状況が続いた。スタートから10分後には風速5・7メートルの風が吹いた。5キロ地点では松田、鈴木を引っ張ったが、その後は2人についた。満開の桜を横目に味方となったのは追い風。「2人につかせてもらって、今日は粘ることができた」。松田に差をつけた同大学構内の直線は今回、20キロ前後で迎える1度だけ。五輪本番は30キロ、40キロ前後と計3度、勝負どころでやってくる。宣言通りの優勝と自己記録更新だったが「今の力を出し切っての結果。五輪本番はもっとゆとりを持って(1周目を)通過したい」と自らハードルを課した。

鹿児島・出水中央高から京都のワコールに入社し丸5年。今月3日の日本選手権女子1万メートルでは、同社の安藤友香(27)が五輪内定。憧れの先輩に挙げる福士加代子(39)は、最下位となりながらも懸命に走り抜いていた。安藤からは「次は麻緒ちゃんにバトンを渡したよ」と背中を押されて発奮した。1月の大阪国際女子でマラソン2度目の優勝。長い時間をかけて準備するマラソンの原動力を「『麻緒ならできる』と言ってくれる人がいるのは幸せなこと。私はその気持ちに応えたい」と明かしたことがある。沿道の観戦自粛が求められた今大会も、期待に応える思いは強かった。

8月7日の本番まで、残すは約3カ月。息つく間もなく長野・東御合宿に入り、準備は本格化していく。

「五輪では私らしい、元気な走りを見せたいです」

札幌で、きれいな青写真が出来上がった。【松本航】