前マラソン日本記録保持者の大迫傑さん(30)が東京オリンピック(五輪)での引退を決めた経緯を語った。28日、契約するナイキ社のオンラインイベントで答えた。

まったく衰えては見えない中、スパッと現役に別れを告げた。

「多くに選手にとって、東京オリンピックは大きな大会で、そこへ向けて全力を尽くす。言い訳を作れる環境を捨てるのがかっこいいと思ったのが1つ。プラス、アメリカやケニアに行って、日本でいろんな方にお会いする中、新しい興味も出てきた。これという1つはないのですが、今、辞めるのが一番きれいなのじゃないかと思った」

その決断は「去年、一昨年ぐらいには考えていた」。20年3月の東京マラソンで当時、自身が持っていた日本記録を更新する2時間5分29秒をマーク。約1カ月後、コロナの猛威は増し、五輪は1年の延期が決まった。「その時は、来年を最後にしよう」と思いは固まりつつあった。その上で最終的に決断したのはレースの「3、4週間前」だった。

コロナ禍の延期による葛藤がなかったとは言えない。ただ、世間に閉塞(へいそく)感が漂う中、使命感を持って走っていた。

「ネガティブな雰囲気がある中、ポジティブな事を体現していく。僕らが負けてしまったら、多くの人はそれにつられて負けてしまうのかなというのもあった。僕らは体現して世の中を変えていかないといけないと思っていた。世の中にメッセージを残していくというモチベーションでスタートした」

もしも東京五輪が中止だったら…3年後のパリ五輪まで目指していたのか? そんな問いにはこう答えた。

「パリでなかったとしても、他の自分のゴールを見つけてやっていた可能性はありますね。ただ、パリまで伸ばしていたかというのは、どうなのかなというのはあります」

6位だった東京五輪は「集大成。100%出し切れたレースだった。言い切れる部分。完全燃焼できたと思う」。新しい志があるから、未練はない。もう今は次世代育成プロジェクト「Sugar Elite」で全国を飛び回る。現役時代からの「延長線上」として、変わらず強い情熱を注いでいる。