3月6日に開催された東京マラソンで優勝した世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(37=ケニア)が、会見を延長してまで語った世界平和の思いが胸に響いた。「ひとつに団結し、平和をもたらしましょう。それができるのはスポーツしかない。いま世界は困難な状況にあるが、ロシアとウクライナの戦闘など打ち負かしましょう」と訴えかけると、会見場から拍手が沸き起こった。

【東京マラソン】キプチョゲ、自ら会見延長し世界平和訴える「結束して、団結して、解決策を」>>

ロシアによるウクライナ侵攻は、日を追うごとに深刻さを増している。ロシア国防省は今月2日、ロシア軍の498人が死亡、1597人が負傷したと発表した。一方のウクライナでは民間人だけで2000人以上が死亡したといわれている。国連難民高等弁務官事務所は避難民が100万人を超えたとし、今後数カ月で国外に出る避難民は400万人に達する恐れがあるとの見解を示した。

国内外のメディアで報じられるウクライナを巡る悲惨な出来事について大会前に問われた際、キプチョゲは「申し上げたいのは、みんな人間です。テーブルに集まり解決策を見いださなければ前に進めない」と言った。いちアスリートにとどまらず自らの言葉で国際社会に呼びかける。そんな姿に、「スポーツと社会」のつながりを強く感じた。

今大会では、一般ランナーの中にウクライナの国旗の黄色と青の服を着て走る姿が見られた。スターターを務めた東京都の小池百合子知事も、同じように時勢を意識した服装をしていた。新型コロナウイルスの影響で2年ぶりに開かれた東京マラソン。大会に関わる人々の中にも、ウクライナと連帯していこうとする思いが感じ取れた。【平山連】