東京五輪女子1500メートルで陸上女子トラック種目での日本選手初の8位入賞を果たした田中希実(22=豊田自動織機)が、24年パリ五輪を見据えて異例の挑戦をした。1500メートルを4分10秒60で制し、25分後にスタートの1万メートルでも32分39秒29で日本人トップの2位。本命は5000メートルだが、パリ五輪でメダルを狙うための戦略で、今後は800メートルも含め多種目で世界と戦う力を備える。

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雨にぬれた地元兵庫のトラックに田中は確かな手応えを刻んだ。3分59秒19の日本記録を持つ1500メートルを制し、その25分後に1万メートルのスタートラインに立った。当初のタイムスケジュールが変わり「一瞬、『えっ』と思った。1万をやめることも考えたが、2本走れてよかった」と笑顔を見せた。

2年後のパリ五輪で世界と戦い、メダルを狙う。父の健智コーチ(51)は「メダルを狙うと口だけで言っても絵空事になる。そこに向けた準備をしなければいけない」と言う。今回の挑戦は「(29日の)織田記念で5000メートルをしっかり走るため」と明かし、その後の木南記念では800メートルにもエントリー。スピード+スタミナ。世界トップレベルと戦うために必要な要素を実戦で養っていく。

田中も「いいトレーニングになった」と充実感を示した。昨年は同じ大会で800メートルからの1500メートルを組んだ。「距離を倍、倍にしてやるのは自分にとってのチャレンジ。完遂できたのはこれからにつながる」と力をこめた。

トラックに限らず、将来的な挑戦も見据える。「今やっていることはマラソンにもつながってくるはず」。分厚い世界との壁を突き破るべく、田中の果敢な挑戦は続く。【実藤健一】

 

○…男子1500メートルで日本歴代3位の記録を持つ佐藤圭汰(18=駒大)は、3分41秒65の5位に終わった。積極的なレース運びで引っ張ったが、最後に失速。「今までは後半に粘る感じだったが、最初から飛ばした。次もこのスタイルでいきたい」。さらなる飛躍を目指し、挑戦を続ける。