女子1500メートルで東京五輪8位入賞の田中希実(22=豊田自動織機)が、世界選手権(7月、米オレゴン州)の内定を決めた。決勝は4分11秒83で3連覇。参加標準記録を切った上での3位以内の条件を満たした。今大会800メートル、5000メートルにもエントリー。複数種目での代表に挑む。

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序盤から中団の内側に位置した田中は感じていた。「みんな、いかないな」。攻めずに待つ展開でペースが上がらない。自然、前に押し出されていく形になった。接触も怖く、想定より速く首位に出たが、脚は十分残っていた。残り1周でスパートすると、一気に後続を引き離した。

強さが際立ったが、「怖かった」と振り返った。同門の後藤や卜部の名前を挙げ、「日本人もラストが身に付いてきてる。3位以内も死守できないんじゃないか」とまでレース前に考えていたという。

自信のなさ。それも口にした。春の米国遠征に原因があった。5月、世界選手権の会場でのダイヤモンドリーグに参戦。五輪2連覇のキピエゴン(ケニア)らとの“前哨戦”の1500メートルで、4分7秒43の最下位15位に終わった。「世界の中でもっと戦えるようになるにはどうすればいいかというのを肌で感じられた」と収穫もあったが、築いてきた手応えを失った。

迎えた国内での日本一決定戦。「自分を取り戻すためのレースでした。乗り越えることができた」とうなずいた。同時に、「まだ楽しむ余裕は戻ってない」と表情は硬いまま。求めるものはまだ残す。

世界選手権では、日程的に3種目は難しい。今大会は残り800メートルと5000メートル。3種目を内定させ、選択する立場で挑むのが理想的で、「(出場を)捨てない判断をできる限りしたい」。悩みながら、世界切符とともに、手にしたい自分がある。【阿部健吾】