<陸上:世界選手権>◇第8日◇22日(日本時間23日)◇ユージン(米オレゴン州)・ヘイワードフィールド◇女子やり投げ決勝

女子やり投げの北口榛花(24=JAL)が、世界選手権で銅メダルを獲得した。五輪を含めて、日本女子のフィールド競技では史上初のメダルの快挙。元担当記者が、北口とやり投げのルーツをひもといた。

北口は小学校ではバドミントンの全国大会で団体優勝した。中学校はバドミントンと両立していた競泳が好きになった。旭川東高では競泳で全国上位に入り、筑波大に進学したい。そう具体的に将来を描いていた。あれから約10年。なぜ、やりを投げているのか?

「森がいなかったら、北口は生まれていないかも」

そう旭川東高の陸上部の恩師である松橋昌巳さん(67)は言う。

森とは…森菜々穂さん。後に関東学連の幹事長も務めた。実は北口にとって、中学バドミントン部の1学年先輩になる。「身体能力が明らかに違ったので」と森さん。同じく進学した旭川東高で陸上部マネジャーになっていた仲良しの先輩と再会。その時、それとなく言われた。

「陸上やってみない?」

北口は陸上部など一切考えになかった。ただ頼まれたら、少し断りづらい性格…。午後6時半頃に始まる競泳のクラブチームの練習と兼ねる形を認めてもらい、入部することに。すると、驚異の才能が花開いた。バドミントンのスマッシュの感覚、水泳で養われた肩の柔軟性も飛躍の下地になった。2年時には陸上に専念。全国高校総体を制したが、その投てきは、ほぼ助走なしで周囲の度肝を抜いた。

女子フィールド種目で日本人初のメダル。歴史の扉をこじ開ける至宝を“発掘”したのは中学バドミントン部の先輩だった。そこには不思議な人の縁があった。【元陸上担当=上田悠太】