魂のラストランで陸上人生を締めくくった。2、3日に行われた第99回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)で、福島県石川町出身の中大・中沢雄大(4年)は、2年連続で復路の8区を任され、1時間4分58秒で区間7位。チームは総合2位で01年以来のトップ3入りを果たした。大学卒業後は実業団入りせず、同県の須賀川市役所に就職予定。陸上競技は引退するが、地元福島で恩返しを誓う。

    ◇    ◇    ◇

中沢が完全燃焼で陸上人生に別れを告げた。2年連続の8区21・4キロ。懸命に腕を振って、前回大会で自身がマークした記録を4秒上回った。首位駒大と1分5秒差の2位で、伝統の赤いタスキを後続につないだ。「最後はしっかり一礼し、礼を尽くして自分の陸上人生を締めくくることができたと思います」。監督車の藤原正和監督(41)から「よくやった。ありがとう」とねぎらわれて一礼。お辞儀をした直後に力尽き、地面に倒れ込んだ。

実は多くの選手が完走後に行う一礼を「1度もやったことがなく、『何でみんなやっているんだろう?』」と感じていたという。それでも、今回は違った。

「最後に引退という形になって、沿道で本当にたくさんの方に応援していただいて、ここまでタスキをつないでくれたチームメートや(藤原)監督とか、そういう方々に最後はしっかり感謝の気持ちを伝えるべきだと思い、一礼しました」

学法石川(福島)時代は青学大・横田俊吾、早大・小指卓也、東京国際大・宗像聖、明大・櫛田佳希(いずれも4年)ら力のある選手と同期だった。3年時の18年、チームは全国高校駅伝で過去最高の3位入賞。だが、中沢は同駅伝を1度も走れずに卒業を迎えた。

一方、中大では2年時から3年連続で箱根路を走った。「あまり外すことがないというか、安定感が自分の強み」と21年が7区5位、昨年が8区3位、今年が8区7位。チームも中沢が出走した3年間は総合12位、同6位、同2位と右肩上がりの成長を遂げた。

「入学時は予選会を10番で通過するようなチームで、2年生で箱根を走ったときも区間5番で両手を挙げて喜んでいる状態で、本当に強くなったなと。強くなっていく発展途上のチームに携われてありがたいですし、優勝目前まで強くなるとはもちろん考えてなかったので、自分たちがやってきたことは間違いではなかったんだと思います」

卒業後は実業団に進まず、福島県内の須賀川市役所で働く予定だ。陸上選手としては引退するが、学生の指導など今後も競技に携わる未来を思い描く。

「福島が好きなのもありますが、福島の方々からたくさん応援していただき、恩返しをしたいというのは大きいです。福島のために自分が得た経験を還元したいという思いはあります」

故郷福島で新たな1歩を踏み出す。【山田愛斗】

◆中沢雄大(なかざわ・ゆうだい)2000年(平12)7月13日生まれ、福島県石川町出身。石川中、学法石川を経て19年に中大経済学部入学。自己ベストは5000メートルが14分6秒78、1万メートルが29分0秒40、ハーフマラソンが1時間2分44秒。好きな食べ物はそば。特技は速読。164センチ、47キロ。血液型A。