不退転の覚悟を持って、新天地に向かった。陸上男子100メートルで日本歴代3位に並ぶ9秒98を自己記録に持つ小樽市出身の小池祐貴(27=住友電工)は今季、拠点を米ロサンゼルスに変更。生活環境を一変させる決断を下し「これで駄目だったら、もう才能がないんだろうなと諦められる」と強い気概をにじませた。
19年に100メートルで日本勢3人目となる9秒台をマークした。ただ、翌年以降は10秒13が最高で、初出場の東京オリンピック(五輪)では予選落ち。昨年も100メートルでは世界選手権の出場権をつかめず、新たな可能性を探った。
契約に至ったのは、00年シドニー五輪金メダルのモーリス・グリーン(米国)らを育てた名コーチのジョン・スミス氏。小池が「もちろん高校の時から知っている。インタビュー動画にも目を通してきた」と言う存在だ。実際に昨年11月から師事すると、的確な指導で基礎が固まり、早くも手応えを感じている。
言語や生活面の違いは一筋縄ではいかず「日本に住むことを捨てるのはかなり難しい」との不安もあった。まずは8月の世界選手権(ブダペスト)での100メートル決勝進出だけを見据え「結果が出ていなかったら環境を変えるのは当たり前のこと。これが一番いい」と断言。国内屈指のスプリンターが、もう一皮むけられるかどうかに注目だ。
◆小池祐貴(こいけ・ゆうき)1995年(平7)5月13日、小樽市生まれ。立命館慶祥高から慶大。13年高校総体100メートル2位。14年世界ジュニア選手権200メートル4位。17年日本学生対校選手権200メートル優勝。18年に慶大を卒業し、ANAに所属。同年ジャカルタ・アジア大会200メートルで日本勢12年ぶりとなる金メダルを獲得。同年に住友電工へ移籍。19年ダイヤモンドリーグ第10戦(ロンドン)で9秒98をマーク。21年日本選手権200メートル優勝。173センチ、75キロ。