男子110メートル障害は大久保然(長岡大手3年)が14秒29で2連覇を決めた。アップ時に両太もも裏をつり、不安を抱えながらのフィニッシュだった。準決勝では14秒14の大会新記録をマーク。7年ぶりに大会記録を0秒02更新していた高速ハードラーは決勝では痛みにも勝った。

ハードルをなぎ倒しながらも、大久保は失速しなかった。「この瞬間のために頑張ってきた。どうしても走り切りたい」。踏み込む力は落ちていたが、気持ちで走った。両太もも裏に不安を抱えながらの“V2走”。アップ中に両足太もも裏をつり、氷で冷やす緊急のケアを施しての決勝だった。走る直前まで違和感は残った。「完走できるか分からなかった。怖くて…」。そんな思いに打ち勝った。喜びながらラインを駆け抜けると痛みが再びよみがえり、倒れ込みながら右太もも裏を押さえた。

「もしかしたら、決勝で13秒台が出るんじゃないかと思っていた」と大久保は言った。準決勝は14秒14の大会新記録をマークし、7年ぶりにタイムを0秒02縮めた。決勝を控え、余力を残しながらの快走に自信を深めていた。ただ、アクシデントで決勝の13秒台の夢はついえたが、果たせなかった目標は夏への原動力だ。「13秒台は見えた。13秒85(県高校記録)を超えたい」。

172センチの身長はハードル選手としては小粒だ。U19選抜合宿(3月=岐阜)で写真撮影した時は「一番小さかった」。それも、大久保の起爆剤。「自分の身長で、できる限りのこと、最大限のことをやる」と負けん気も強い。力任せに走って終盤失速するクセもシーズン前に修正。「重心の真下に足を下ろすようにした」と、よりスムーズに次の動作につなげる走りを身につけた。100メートルの自己記録も、追い風参考ながら11秒10と昨年より0秒11速い。「インターハイは優勝を狙う」と大久保。決して夢物語ではない。【涌井幹雄】