昨年世界選手権9位のディーン元気(31=ミズノ)が82メートル65で2連覇を飾った。

体調も天候も万全ではなかったが、前回大会と世界選手権(オレゴン)の記録を超える今季自己ベストをマーク。8月に行われる世界選手権(ブダペスト)の参加標準記録(85メートル20)には届かなかったものの、6回中3回で80メートル台を計測する安定ぶりを見せ、着実にポイントを積んだ。

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王者が力強く放ったやりは、80メートルラインを軽々と越えた。5投目。ディーンは、やりの行方を見届けて好記録を確信。右手人さし指を高く突き上げて満足げな表情を浮かべた。表示板には今季自己最高の82メートル65。1投目から80メートル27で首位に立っていたが、この1投でライバルを引き離した。

「今日で80メートル飛んでるなら、間違いなく80メートル後半も投げられる」。確信めいた発言には理由があった。「言い訳になっちゃうんですけど、今日熱が37~38度あったんです」

原因は、病気ではなく自業自得という。大会2日前。お気に入りの白Tシャツを洗剤につけたところ「(洗剤を)思いっきり吸い込んじゃって喉が焼けちゃった」。発熱で頭がぼーっとしながらも安定した投てきを披露。結果は6投中3投で80メートル超え。さらに今季自己記録をマークと、昨年の大会と9位に入った世界選手権の自身を上回った。

同じやり投げで刺激を受ける選手がいる。女子の北口は昨年世界選手権で銅メダル。今年もすでに出場権を手にするなど、大きな注目を集めている。12年ロンドン五輪から戦い続けるディーンは「女子だけじゃなくて、男子もよろしくお願いします」とちゃめっ気たっぷりに口にしたこともある。

10年ぶりの世界選手権で躍動した昨季からの好調を維持。2大会連続の世界切符を狙う。男子やり投げの出場枠は28人。大会前のワールドランキングによる出場枠の13番目に位置しており、7月30日までキープすれば出場できる。この大会での記録なども上乗せされると、さらに順位が上がる可能性がある。

「世界選手権に向けて集中してやっていく。ベースを80メートルから85メートルに上げたい。可能性は感じている」。31歳の言葉には、早大時代の12年にマークした自己記録84メートル28の更新に期待を持たせた。【竹本穂乃加】

◆ディーン元気(げんき)1991年(平3)12月30日、神戸市生まれ。平野中-市尼崎高。高校時代に総体でやり投げと円盤投げで2冠。早大進学後にやり投げに専念し、3年で12年日本選手権優勝、同年ロンドン五輪10位。22年世界選手権9位。自己ベストは84メートル28(12年4月)。182センチ、88キロ。父は英国人のジョンさん、母博子さん。ミズノ所属。