昨夏の世界選手権(米オレゴン州)代表の坂井隆一郎(25=大阪ガス)が10秒11(向かい風0・2メートル)をマークし、初優勝を飾った。柳田大輝(東洋大)らの猛追を振り切った。

地元・大阪での初優勝。込み上げる思いがあった。

「地元の大阪で優勝したいと思っていた」

涙の意味を問われると「うれしさの涙です」とほほえんだ。左足にはテーピングが巻かれていた。

大会開幕前から左アキレス腱(けん)に痛みがあった。「ズキンズキンする感じ」。万全ではない中、4日の準決勝では全体トップとなる10秒17(追い風0・2メートル)で突破。確実に勝ち切り、決勝へ駒を進めた。

「痛くてやめたい気持ちもあったけど、今後もこういう状況があるかもしれない。チームで話し合って出ることにした」

迎えた決勝。持ち前のスタートがさえた。号砲への反応速度を示すリアクションタイムは、トップタイの0・155。課題だった中盤以降へ向けて加速し、そのまま逃げ切った。

「絶対に日本選手権で優勝したいと思っていて、しかも大阪で優勝できたことは本当によかった」

まだ8月の世界選手権(ブダペスト)の参加標準記録(10秒00)を満たしておらず、出場権を得るには7月30日までに突破するか、8月2日以降に確定する世界ランキングでターゲットナンバー(出場枠の目安)以内に入る必要がある。

今季は再び世界選手権の舞台へ戻ることが1つの目標。「標準を切って(代表に)選ばれたい思いはあるんですけど、今のところはランキングにもしっかり入っているので、そことも併用しながら決められれば」と冷静に見据える。

そのためにも、特に力を入れている「最初の6歩」と「2次加速」を高めていく。

「今伸びている2次加速と、武器であるスタートをあわせて、前半でもっともっとリードをつくれるようなレースをやっていきたい」

準決勝で2組6着(10秒23)で敗退となった世界選手権から1年。初優勝を自信とし、さらに成長の跡を示していく。【藤塚大輔】