今夏の全国高校総体女子100メートルで4位に入った常盤木学園(宮城)の千葉安珠(あんじゅ、2年)が、大会新記録の11秒89(向かい風0・3メートル)で同種目の東北王者に輝いた。同校OGの佐藤美里(現中大2年)が20年にマークした11秒91を0秒02更新。右足負傷やインフルエンザ罹患(りかん)という試練を乗り越え、完全復活へ1歩近づいた。
◇ ◇ ◇
頂点に立った千葉が満面の笑みを浮かべた。女子100メートル決勝。向かい風を切り裂くように、ぐんぐん後半に加速。2位に0秒25先着し、両手でガッツポーズをつくった。自己ベストの11秒84に及ばずも、常盤木学園の先輩・佐藤が持つ大会記録を3年ぶりに塗り替えた。「大会新は意識せず、久しぶりの大会で体がなまっていたので『けがなく走ろう』という思いでした。結果的に美里先輩の記録も超えられて良かったです」と、はにかんだ。
この日の予選は12秒07(追い風0・1メートル)で全体トップ通過。だが、「体が重くて、いつもよりもピッチが全然上がらず、後半の伸びがなくて」と手応えはなし。だからこそ決勝は楽しむことに集中した。「いつもは『絶対に勝たないと』『タイムを出さないと』とかいう気持ちだったんですが、今日は国体に向けてのチャレンジ的な感じで気張らず、いいレースができました」。無欲で臨んだ結果、決勝の好走につながった。
今月8日の宮城県高校新人陸上100メートルは、この日と同様に佐藤の大会記録を上回り優勝した。しかし、レース中に右足を痛め、その翌日からインフルエンザに罹患(りかん)。「歯車が全然かみ合わず、すごいつらい時期」を過ごしたが、1週間の強制休養で走らなかったことで右足の状態も上向いてきた。
今後は連戦が続く。まずは10月7、8日の日本選手権リレーで「4×100メートル」に出場予定。「先輩たちとの最後のレースになるので、全員で絶対に悔いのないようなレースをして、結果として決勝に行って入賞したいです」。同13日開幕の鹿児島国体に弾みをつけるためにも、笑顔でバトンを渡す。【山田愛斗】
○…女子3000メートルでは、大曲(秋田)の鈴木彩花(2年)が9分42秒62で独走優勝を決めた。スタートからゴールまで1度もトップを譲らない快走。大きく失速せず、最後は両手を広げゴールした。「優勝できると思わなかったので、実感が湧いてないですが、うれしい」と笑顔。目標タイムの9分45秒もクリアし「来年は9分30秒台を出したい」と力を込めた。
○…男子走り幅跳びでは、今夏の全国高校総体で3位に入った日大東北(福島)の君島凪冴(なぎさ、2年)が、7メートル26(向かい風0・4メートル)で優勝した。大会記録7メートル31、県高校記録7メートル42のダブル更新を目指していただけに「うれしい半面、悔しい気持ちの方がでかい」と振り返った。1~6本目すべて7メートル台という目標もあった中、3本に終わり「今大会は何も達成できなかった」。自己ベストは7メートル40。5月の県高校総体では追い風6・3メートルの参考記録ながら7メートル58をマークしており「その記録を公認で跳びたい」と意気込んだ。