<陸上:織田記念国際>◇29日◇広島広域公園陸上競技場

 高速トラックに追い風の好条件が加わり、日本記録更新も期待された女子100メートルの福島は決勝の直前に姿を消した。日本陸連の麻場女子短距離部長が「一瞬、何が起きたか分からなかった」と言うほど周囲もざわめいたが、アップ中に左ふくらはぎがけいれんしたのが理由だった。

 冬季練習で筋力強化に励み、自信を持って迎えた今季初戦は予選で終盤流して11秒50。「あとはスタートだけしっかりすれば。タイムは特に気にしない。この走りならこんな感じかな」と穏やかな表情で手応えを口にしていただけに、関係者も驚きを隠せなかった。

 高速トラックは反発力が強く、脚へのダメージが小さくない。22歳の福島は一昨年の日本選手権でも同じ競技場で脚の付け根の張りで決勝を棄権したことがある。昨年はこの大会で11秒21の日本新を出し、広州アジア大会で女子短距離2冠の快挙につなげた。中村監督は「前とは違い、単なるけいれん。肉離れとかではない」と軽症を強調し、巻き返しを期した。