五輪選考会が全て終了したマラソンは一段落したが、4月以降のトラックシーズンに向けて陸上界の動きは止まらない。3月後半一番の話題は注目のニューフェイス、宮脇千博(20=トヨタ自動車)の初ハーフマラソン出場だ。全日本実業団ハーフマラソン(3月18日、山口)でワンジュキ・ジャコブ(26=愛知製鋼)ギタウ・ダニエル(24=富士通)ら、国内実業団チーム所属のケニア選手たちに挑む。

 宮脇は昨年11月に1万メートルで27分41秒57とロンドン五輪A標準を突破。激戦種目の男子1万メートルの代表候補に名を連ねた。元旦のニューイヤー駅伝3区でも区間賞を獲得し、駅伝ファンにも知られるようになった。

 岐阜・中京高を卒業して2年目。同学年には箱根駅伝1区区間賞の大迫傑(早大2年)ら強豪選手が多い。そのほとんどが関東の大学に進学したが、宮脇だけは“世界を目指す近道”という判断で直接実業団入りした。佐藤敏信監督は「3年目である程度の結果を」と焦らずに育てたが、予想を大きく上回る成長を見せた。

 15キロ以上のレース出場は初めて。近い将来のマラソン進出も視野に入れているが、まずは1万メートルのロンドン五輪代表入りへの足だめしとなる。ハーフマラソンの日本記録は1時間00分25秒。その更新は難しいと思われるが1時間1分台のタイムが出せれば日本選手権に向けて調整は順調といえるだろう。

 女子の部の注目は5000メートルで五輪B標準を切っているスピードランナー正井裕子(31=日本ケミコン)。マラソンで世界陸上代表経験のある小崎まり(36=ノーリツ)や野尻あずさ(29=第一生命)ら、スタミナのあるランナーとどう戦うか。1時間10分が切れたら大収穫だろう。

 アジアクロスカントリー選手権(24日、中国・清鎮)では三津谷祐(27=トヨタ自動車九州)と新谷仁美(24=佐倉アスリート倶楽部)に注目したい。

 三津谷は05年の世界陸上1万メートル代表だったが、マラソン転向に失敗。慢性疲労のため休部していたが、今年に入って復帰した。福岡国際クロスカントリーでは1万メートルの五輪候補たちを終盤追い上げる好走を見せた。

 新谷は昨年の世界陸上5000メートルで決勝に進んだ。岡山・興譲館高ではマラソン五輪代表となった重友梨佐(24=天満屋)と同学年。大いに刺激を受けている。

 外国勢はそれほど強豪選手が出ない大会。優勝争いをしてトラックシーズンに弾みをつけたい。【3月後半の主な陸上競技大会】3月18日:全日本実業団ハーフマラソン(山口)3月18日:まつえレディースハーフマラソン&日本学生女子ハーフマラソン(松江)3月24日:アジアクロスカントリー選手権(中国・清鎮)