<9月前半の陸上競技展望>

 世界のトラック&フィールドは9月でシーズンが終了する。ダイヤモンドリーグは最終戦のブリュッセル大会が7日に行われ、チューリッヒ大会(8月30日)で実施された17種目と合わせて32種目の年間ツアーチャンピオンが決定する。

 現時点で出場選手は発表されていないが、男子100メートルでウサイン・ボルト(26=ジャマイカ)とヨハン・ブレーク(22=ジャマイカ)に注目が集まっている。

 ロンドン五輪ではボルトが9秒63の五輪新記録で2大会連続金メダルを獲得したが、6月末のジャマイカ選手権ではブレークが勝っている。五輪後の直接対決はないが、ダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会はブレークが9秒69の世界歴代2位タイの快記録で優勝した。2強対決が実現すればシーズンの掉尾を飾るにふさわしい勝負となる。

 また、各種目の年間チャンピオンの顔触れは半数が、ロンドン五輪金メダリストとは違ってきそうだ。両者を見比べるのも面白いだろう。

 国内では秋シーズンが開幕する。9月に日本学生対校選手権(日本インカレ)と全日本実業団対抗、10月に国体と日本ジュニア&ユース選手権と全国大会が続く。そのスタートを切る日本インカレでは各種目の学生日本一と、総合得点で争う男女の大学日本一チームが決定する。

 注目は男子短距離の飯塚翔太(21=中大3年)と山縣亮太(20=慶大2年)の対決だ。ロンドン五輪では山縣が1走、飯塚が4走を務めた4×100メートルリレーで5位に入賞。銅メダルの北京五輪からメンバーが3人代わって不安視もされていたが、学生2選手の成長で五輪連続入賞を“4”に伸ばした。

 2人は個人種目でも国際大会の実績がある。飯塚は2010年の世界ジュニア200メートル金メダリスト。ジュニアとはいえ短距離種目の“世界一”は日本の陸上史上初めてだった。山縣はロンドン五輪100メートルで準決勝に進出。予選10秒07、準決勝10秒10はともに、日本選手が過去の五輪で出した最高タイムを上回った。

 スタートと加速局面に強い山縣が100メートルで、中盤以降のスピード持続に優れた飯塚が200メートルに優勝することが予想される。ただ、今季2人がシニアでも通用するようになったのは、山縣は中盤以降の走りを改善したからであり、飯塚は100メートルが強くなったからだ。

 100メートルには五輪リレーで補欠だった九鬼巧(20=早大2年)も出場する。緊張感のあるレースを2種目で展開してくれるだろう。

 ロンドン五輪男子やり投げ10位と健闘したディーン元気(20=早大3年)は、円盤投げとやり投げの2種目にエントリーしている。五輪後もダイヤモンドリーグ・チューリッヒ大会に出場するなど休んでいないので、自身の持つ学生記録(84メートル28)更新ができるコンディションにはなっていないかもしれない。村上幸史(32=スズキ浜松AC)の持つ大会記録(80メートル59)が目標になるだろう。

 記録的には男子棒高跳びの山本聖途(21=中京大3年)が期待できそう。ロンドン五輪は予選で記録なしに終わったが、ピットでの表情からも“次こそは”と意を決したことが見てとれた。帰国後は5メートル50と、ローカル大会で跳ぶとは思えない高さをクリアしている。自身の持つ5メートル62の学生記録更新に挑戦する。【9月前半の主な陸上競技大会】9月7日:ダイヤモンドリーグ・ブリュッセル大会(ベルギー)9月9日~12日:日本学生対校選手権(東京・国立競技場)