<陸上:日本学生対校選手権>◇3日目◇11日◇東京・国立競技場

 男子10種競技はロンドン五輪代表だった中村明彦(中京大4年)が、7657点の自己3番目の記録で優勝を飾った。「帰国後は上手くトレーニングができず、不安でいっぱいでした。勝ててホッとしています」。競技後は涙が止まらなかった。

 オリンピックはサブ種目だがA標準を破った400メートル障害で出場。しかしカーブのハードルを越える際、足がバーよりも下を通過したために予選で失格していた。

 帰国後は本職の十種競技での今大会優勝に照準を定め、気持ちを切り換えようとした。「10種競技の練習は2カ月半していませんでした。帰国して練習したら砲丸は全然飛ばないし、棒高跳びは本来14歩助走ですが、6歩助走でも上手く突っ込み動作ができませんでした」

 実際、今大会の中村は種目毎に出来不出来の差が大きい展開だった。それでも8種目目の棒高跳びで今大会唯一の自己新をマーク。安全圏に入り、最後の1500メートルもトップでフィニッシュして圧勝した。「オリンピアンとしてというよりも、中京大陸上部員の1人として、部に貢献したいと思って臨んだ大会です。途中で立て直せたのは、4年間ずっと一緒の仲間がそばにいたことと、スタンドからも大きな声援を送ってもらえたからです」

 今回は学生競技生活の締めくくりと位置づけて10種目をやり遂げた。だが、オリンピックという大舞台で失敗した経験も、窮地に追い込まれた今大会で生きていたはずだ。「ロンドン五輪は申し訳ない結果に終わりましたが、ロンドンの悔しさを必ず、今後の成長に生かすつもりで帰国しました」

 ロンドンでは10種競技に出場した右代啓祐(26=スズキ浜松AC)が、充実した表情で競技をするのを目の当たりにした。「スタンドから見た右代さんは、すごい人たちを相手にしても本当に楽しそうでした。まだまだ力不足ですが自分もそういう場で戦いたい」

 400メートル障害には来年以降も出場するが、世界陸上やオリンピックは十種競技で目指す。