<岐阜国体:陸上>◇10日目◇8日◇岐阜長良川競技場

 “ハードル版・川内優輝”ともいえる選手が現れた。

 成年男子110メートル障害は古川裕太郎(27=小島プレス)が13秒81で優勝。これまで持ちタイムは日本のトップレベルでも勝負弱さがあり、今年の日本選手権も準決勝落ちするなどしていた。考えた対策が“位置について”の声がかかる直前まで、心の中で歌を歌うこと。「ボルト(26=ジャマイカ)のスタート前のパフォーマンスなども参考にしました。レース以外のことを考えることで、緊張を和らげることができるようになったんです」。

 9月の全日本実業団で優勝し、その方法が有効だとわかった。その勢いで今大会に臨み、1台目からリードを奪うと危なげなく逃げ切った。

 順大で関東インカレに優勝したが、“競技が仕事”の実業団チームに入ることはできなかった。“フルタイム勤務”の実業団である小島プレスに入社。自動車部品の営業で夜の10~11時まで残業することも珍しくない。夜中に寮の庭で1時間の練習をする日が続くことも。定時制高校勤務で午前中を練習に充てられる川内優輝(25=埼玉県庁)よりも厳しい練習環境かもしれない。

 その環境でも“競技が仕事”の実業団選手に挑み続けた。「そこはシステムではなく、個人の精神力だと思います。『絶対に負けない』と思って頑張ってきました」。

 177センチとハードラーとしては小柄だが、股関節の柔軟性や、細身だから可能となる素早い動きでカバーしている。自己ベストは13秒71で今季日本3位のタイム。五輪や世界陸上のA標準とは0.2秒差があるが「4年後のオリンピックをあきらめずに狙っていきます」と力強く言い切った。