<陸上:兵庫リレーカーニバル兼モスクワ世界陸上代表選考競技会>◇21日◇神戸ユニバー記念競技場

 男子10000メートルは新生DeNAのキャプテンを務める上野裕一郎(27)が、本人も「いつ以来かわからない」という日本人1位(全体5位)に。28分16秒79で世界陸上のB標準(28分05秒00)には届かなかったが、季節外れの寒さのなかで自己記録に4秒と迫る好走を見せた。

 5000メートルでは2009年に世界陸上代表となっている上野。10000メートル挑戦の意思はあったが、実際にはなかなか取り組めなかった。契機となったのは昨年のロンドン五輪を逃したこと。瀬古利彦総監督らスタッフの意見も取り入れて、苦手だった長い距離の練習を積極的にこなし始めた。この冬にはマラソンのペースメーカーも引き受け安定した走りも心がけた。「今日は1人になった6000~9000mの苦しいところでも、1周70秒かからなかった。以前よりも1秒速い設定で押していけるようになったんです。27分台の感覚はつかむことができました」

 3月の全日本実業団ハーフマラソンは後半失速して38位。名門エスビー食品最後のレースを飾れなかったが、昨年からの取り組みがDeNAのスタートと同時に成果となって現れ始めた。

 長距離・駅伝に新規参入したDeNAでは、成果主義がより徹底した方式になっているという。結果を出せば厚く報われるが、結果が出なければ契約を解除される。上野は「その方が自分には合っている。社員ですがセミプロのつもりです」と歓迎。

 本来の持ち味も失っていない。レース終盤で日本人2位となった設楽啓太(21=東洋大)らに差を詰められたが、ラストの1周で大きくペースアップできたのは上野だけだった。国際大会で通用する武器を持った数少ない日本選手。将来的にはマラソン進出も視野に入れた10000メートルで4年ぶりの世界陸上を狙う。