<陸上:日本選抜和歌山兼モスクワ世界陸上代表選考競技会最終日>◇28日◇和歌山市紀三井寺公園陸上競技場

 

 男子10種競技はロンドン五輪代表の右代啓祐(26=スズキ浜松AC)が7824点で逆転優勝。自身の持つ日本記録(8073点)更新はならなかったが、初日でトップに立った400メートル障害ロンドン五輪代表の中村明彦(22=スズキ浜松AC)を逆転して、第一人者の貫禄を見せた。

 鮮やかな逆転劇が演じられたのは後半2種目め(トータル7種目め)の円盤投げだった。右代が49メートル03と10種競技中で出された日本最高記録を投げて850点を獲得。6種目終了時点で392点あった中村との差を一気に逆転した。

 続く棒高跳びとやり投げは右代の得意種目。333点までリードを広げ、最後の1500メートルで200点縮められたが逃げ切った。「僕にとっては我慢しないといけないのが1日目。持ち味である2日目の円盤投げで、(勝負の流れを)大きく引き寄せるパフォーマンスができたのは大きかった。冬のトレーニングの成果を出せたと思います」。

 7824点はシーズン初戦としては自己2番目で、「記録的には60点」と低い自己評価だが、「内容的には80点」と合格点をつけた。「失敗しても7800点を出せたのは、この1年で実力がついた証拠です。6月の日本選手権で大きな記録を出すために、良い状態でシーズンに入れています」。

 中村は逆転された円盤投げが28メートル83で441点しか取れなかった。投てき種目を苦手としているが、自己記録からも4メートル半ショートして無念の表情を見せた。「まさか20メートル差がつくとは思っていませんでした。逆転されるとしても、次の棒高跳びまで粘りたかった。早すぎましたね」

 投てき種目の弱さが勝敗を左右してしまった中村。得意のラン系種目を伸ばすことよりも、弱点種目の克服を優先すべきとの意見もある。「手っ取り早く8000点を出そうとしたら、投てき専門のコーチに教わって、ウエイトトレーニングをがんがんやるのも有効だと思います。でも、それをやってしまうと頭打ちが早く来てしまう。スプリントや跳躍を伸ばせるところまで伸ばし、26歳とか28歳になってから投てき種目の伸びを加えた方がいい」。その考え方でトレーニングをすれば、オリンピックに出た400メートル障害の記録も自然と伸びる。リオ五輪には10種競技と400メートル障害の2種目出場することも視野に入れている。

 正確な資料はないが、2人の五輪選手が10種競技で直接対決したのは戦後初めての可能性がある。パワー系種目に強い右代と、ラン系種目に強い中村。それぞれの特徴を生かし、10種競技の醍醐味を2日間にわたって見せてくれた。