<ダイヤモンドリーグ最終戦・ブリュッセル大会展望>

 陸上のダイヤモンドリーグ最終戦のヴァンダム記念が6日、ベルギーのブリュッセルで行われる。モスクワ世界陸上男女短距離3冠のウサイン・ボルト(27=ジャマイカ)とシェリー・アン・フレイザー・プライス(26=ジャマイカ)ら、金メダリスト14人が出場する豪華な顔ぶれ。先月末のチューリッヒ大会で半数の16種目の年間優勝者が決定した。今大会では残る16種目で、4万ドルの賞金とダイヤモンドトロフィーを獲得するツアーチャンピオンが出そろうことになる。

 ボルトはツアーチャンピオンの懸かった200メートルに出場すると思われていたが、2日に100メートルへの出場を決断した。100メートルの最終戦はチューリッヒで終了し、今大会で勝ってもダイヤモンドリーグの賞金は出ない。

 狙うのは100メートルの今季世界最高記録だろう。200メートルはモスクワで19秒66を出したが、100メートルではタイソン・ゲイ(31=米国)の9秒75が残っている(ゲイのドーピング違反が発覚したので取り消される可能性もある)。

 ボルトはチューリッヒの100メートルで優勝後に「疲れがあって最高のコンディションではない。早くシーズンを終わらせて休みたい」と、後ろ向きな発言を繰り返した。ボルトのぼやきはシーズン終盤の恒例行事になっているが、観客をがっかりさせないための配慮かもしれない。

 女子100メートルのフレイザー・プライスは今季絶好調だ。モスクワ世界陸上では22年ぶりに女子100メートルと200メートルの2冠を達成。100メートルでは2位に0・22秒もの大差をつけた。この種目での世界陸上史上最大差だった。

 モスクワでは向かい風0・3メートルのなかで10秒71と、自己記録に0・01秒と迫った。ジョイナーの10秒49は無理だが、10秒64の世界歴代2位記録を更新する可能性はある。

 チューリッヒで決めた200メートルに続いて、ツアーチャンピオンも間違いない。ダイヤモンドリーグの年間2冠は史上3人目の快挙になる。

 フレイザー・プライスのほかに記録的な期待が高いのは、男子の跳躍2種目である。棒高跳びのルノー・ラビレニ(26=フランス)は今季6メートル02をクリアしている。モスクワ世界陸上こそ銀メダルと敗れたが、本来は5メートル90以上を6試合で跳ぶ安定感が武器。6メートル05の世界歴代2位の更新は十分あり得る。

 三段跳びのテディー・タムゴー(24=フランス)はモスクワ世界陸上で18メートル04の世界歴代3位を跳んだ。ジョナサン・エドワーズの18メートル29は難しいが、世界歴代2位の18メートル09を狙える。

 ダイヤモンドリーグ・ポイントで注目したいのは女子円盤投げ。モスクワ世界陸上金メダリストのサンドラ・ペルコビッチ(23=クロアチア)が勝てば今季7戦全勝。チューリッヒ大会女子400メートル障害のスザーナ・ヘジノワ(26=チェコ)に続き、史上3人目の32点(最高到達点)獲得者となる。◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル〜8位1000ドル)。各大会のポイント合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、五輪や世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、米国勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、五輪や世界陸上よりも激しい戦いになる。