<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇第1日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ公園陸上競技場◇男女1万メートル決勝(タイムレース)

 モスクワ世界陸上1万メートルで5位に入賞した新谷仁美(25=ユニバーサルエンターテインメント)は出場しなかったが、今大会の女子1万メートルに出場した2人の選手が新谷の名前を出して自身の奮起を誓った。

 1人は32分09秒80で日本人3位(全体5位)となった萩原歩美(21=ユニクロ)だ。4月に31分45秒29と世界陸上A標準に0・29秒と迫る好タイムを出したが、日本選手権では新谷に周回遅れにされて3位。派遣が2人となれば代表入りする立場だったが、選ばれたのは新谷だけだった。

 「新谷さんが強かったのは確かですが、周回遅れにされて本当に情けない思いをしました。世界陸上は、行けなかった悔しさを持ちながらテレビで見ましたが、自分ではまだあの舞台で勝負はできない、自分の考えが甘かったと思い知りました」

 もう1人は新谷の興譲館高の後輩に当たる菅華都紀(19=豊田自動織機)である。32分42秒96で全体では14位だが、1組目ではトップを占めた。

 高校では2年時に全国高校駅伝1区で区間賞を取り、チームの優勝に貢献した。世界で活躍する夢を抱いて高校から実業団に進んだが、入社1年目の昨年は股関節にウィルスが入る故障で良いところなく終わった。

 しかし自身2度目の1万メートルとなった今回、自己記録を40秒近く更新。強い選手の組ではなかったが、最後の周回で逆転したレース内容も良かった。

 「1~2月から故障なく練習を積むことができましたが、一番刺激となったのは新谷先輩です。先輩が活躍されるたびに、『ここまで追いついて来なさい』と言われていると感じました」

 新谷と国内2番手選手の溝を埋めることが課題となっている女子トラック長距離種目だが、岡、萩原、菅と若い力が息吹き始めている。