<10月前半の陸上競技展望>

 トラック&フィールドでは秋の全国大会第3弾となる国体と、極東地区の国際大会である東アジア大会と2つのビッグゲームが開催される。ロードレースでは秋のワールド・マラソン・メジャース第2戦のシカゴマラソンと、学生駅伝シーズン開幕を告げる出雲全日本大学選抜駅伝が行われる。

 国体で注目されるのは少年A100メートルに出場する桐生祥秀(17=洛南高)だ。4月に10秒01を出して9秒台が期待されるようになったが、5月以降の最高記録は10秒17。モスクワ世界陸上も予選を突破できなかった。帰国時に「(国体で)記録は狙わない」ともコメントしている。

 だが前述の10秒17はインターハイ近畿大会で、16日間で20レースに出場した過密スケジュールの中で出したもの。昨年秋に自己新を連発した実績もある。桐生が0秒01自己記録を更新すれば日本タイで、0秒02更新すれば黄色人種初の9秒台が実現する。

 東アジア大会では9秒台が期待されている1人、山県亮太(21=慶大)が男子100メートルに出場する。モスクワ世界陸上では100メートル予選で脚を痛め、帰国後の日本インカレでも準決勝を棄権した。22日の早慶対抗では10秒31。

 世界陸上後は抑えめの走りしかできていないが、外国人選手を相手にトップスピードの走りに戻したい。

 シカゴマラソンの男子は昨年優勝のツガエ・ケベデ(26=エチオピア)ら、2時間5分以内の記録を持つ4選手が出場する。ケベデが昨年出した2時間04分38秒の大会記録は世界歴代8位。モーゼス・モソップ(28=ケニア)は2011年のボストンで2時間03分06秒で走っているが、下り坂コースのため国際陸連は公認していない。マラソンの安定度ではケベデが上だが、トラックのスピードではモソップがまさる。

 女子は前回1秒差で1、2位となった2人が再び対決する。2時間22分03秒で優勝したアステード・バイサ(26=エチオピア)と、2位のリタ・ジェプトゥー(32=ケニア)で、ともに自己新だった。

 日本からは男子で2時間09分秒03を持つ尾田賢典(32=トヨタ自動車)と、女子で2時間24分09秒の赤羽有紀子(33=ホクレン)が参戦。2人とも2年前のテグ世界陸上代表だったが、昨年のロンドン五輪、今年のモスクワ世界陸上と代表入りを逃した。再起のきっかけにしたい。

 出雲全日本大学選抜駅伝は6区間44・5キロの大会で、11月の全日本大学駅伝(8区間106・8キロ)、1月の箱根駅伝(10区間217・9キロ)に比べ区間数が少なく距離も短い。スピードランナーや大砲がいる大学が有利になる。

 窪田忍(4年)、油布郁人(同)、村山謙太(3年)、中村匠吾(同)とスピードランナーが多い駒大がV候補筆頭。東洋大は1万メートルで27分台を出している設楽啓太・悠太の双子兄弟の区間で駒大からリードを奪いたい。

 モスクワ世界陸上1万メートル代表の大迫傑(4年)を擁する早大と、留学生のエリック・オムワンバ(2年)がいる山梨学大は、エースの力で形勢を一気に逆転できる。【10月前半の主な陸上競技大会】10月4日~8日:国体陸上競技(調布市 味の素スタジアム)10月9日~11日:東アジア大会(中国天津)10月13日:シカゴマラソン(米国シカゴ)10月14日:出雲全日本大学選抜駅伝(島根県出雲市)